静岡県がリニア中央新幹線の静岡工区の着工の容認を表明したことで、10年近く遅れていた工事が大きく前進することになった。JR東海は年内にも着工する考えだが、静岡工区は技術的に「最難関」(同社関係者)の工事となる。早期開業の実現には、技術的課題のクリアがカギとなる。
静岡県の鈴木康友知事は7日、記者団に対し、「最も信頼性が置けて頼りになるのは国だ。国の関与を引き出しておくということは大変重要なことであった」と説明。JR東海との水資源を巡る補償の確認書締結やモニタリング体制の構築にあたり、国の関与を取り付けたことが着工の容認につながったことを明らかにした。
静岡県は長年にわたり、工事が大井川の水資源や南アルプスの生態系に与える影響を懸念し、工事の着工を認めなかった。JR東海が建設から運営までを行うリニア事業に国が関与したことについて、鈴木氏はこれまで「将来の担保」と強調し、静岡県が懸念する点は今後も守られることになるとの認識を示していた。
静岡県の着工の容認を受け、JR東海は年内にも静岡工区の工事を始める方向だ。
ただ、静岡工区を含む「南アルプストンネル」(全長約25キロ・メートル)は、標高3000メートル級の南アルプスの山々の地上から深さ1000メートル以上を掘り進めることになり、リニアの全工事の中でも最難関とされる。地下トンネルは深い場所ほど土の重みが増し、壁面などへの圧力が高まるためだ。
JR東海は、静岡工区の工事に少なくとも10年程度かかるとし、仮に今すぐ着工したとしても開業は最短で2036年以降となる見込みだ。国土交通省の幹部は、「明日にでも着工すれば遅れは最小限にできるが、JR東海は、県や地元自治体とようやく築いた関係を壊さないよう慎重だ」と指摘。工事開始を急がない可能性も示唆する。
7日に名古屋市で取材に応じたJR東海の丹羽俊介社長も、「南アルプストンネル」の工事状況を念頭に、「当初に見込んでいたよりも難しい工事になるのでは」と話した。JR東海は、現在まで新たな開業時期を示しておらず、静岡工区の着工後に開業時期を明らかにする方針だ。
リニアの工事を巡っては、すでに着工した場所でも問題が起きている。
岐阜県瑞浪市では地下トンネル工事現場周辺で、地下水の水位低下や地盤沈下が発生し、掘削工事を中断した。JR東海は住民説明会を実施するなどの対応を取っている。また、東京都品川区でも地下トンネル工事の直上で、地面の隆起が確認された。品川―名古屋間の長距離にわたる工事で、「予期せぬ問題」が相次いで発生すれば、工期の延長は避けられない。
また、JR東海にとっては、近年の資材費や人件費などの上昇への対応も必要となる。工事費は現在、当初計画から倍増の約11兆円に膨らんでいるが、さらに増加する可能性も指摘されている。