≪大便を注射器で点滴に混入…殺害≫「気が動転して…」容疑者の看護師は捜査状況を聞いて「辞めます」 事件直後に証拠品の“変色チューブ”が突然消え、すり替えられた可能性も

〈≪病院の点滴に大便混入で殺害≫「チューブの中が茶色くなって…」空白の時間は“約1分“…“凶器”に使われた便は「誰のものかが捜査のカギ」逮捕された女は事件後に助産師として勤務 【柏市】〉から続く
千葉県警が患者の点滴に大便を混入させて殺害したとして元看護師の古川美由紀容疑者(51)を殺人容疑で逮捕した事件で、現場となった「柏たなか病院」と運営法人の幹部が7月16日、記者会見を開いた。病院側の説明で、今年1月に患者の容体が急変した際、別の看護師が患者の点滴チューブが茶色く汚れていたことに気づいて外しこれを保管したが、古川容疑者が保管容器を持ち出し、発見されたときにはチューブの“汚れ”がなくなっていたことがわかった。千葉県警は、証拠隠滅を図った疑いがあるとみて調べているもようだ。
《画像》「点滴チューブに大便が」犯行に使われたのと同じ点滴用の延長チューブと、古川容疑者の自宅
病院長らは1分近く頭を下げ続け謝罪
事件では同病院に入院していた会田栄次さん(当時75)=茨城県取手市戸頭=が1月31日夜、敗血症による多臓器不全で急死した。会田さんは同月30日午前4時ごろ、病院でその日の当直だった男性准看護師Aさんに苦しいと訴え容体が悪化した。
千葉県警の調べでは、その夜、Aさんとの2人態勢で内科病棟の夜勤についていた古川容疑者が、異変が起きる直前の30日午前3時55分ごろ、担当ではない会田さんがいる4人部屋の病室に入り、約1分後に出てくる姿が防犯カメラに映っていた。
2月3日に司法解剖した結果、会田さんの体内の血液から人間の大便に含まれる細菌が検出され、古川容疑者が点滴チューブに大便を入れて殺害を図ったとみて7月15日に逮捕。古川容疑者は調べに「チューブに大便を混入したことを否認します」と供述しているという。
逮捕翌日の16日、説明の記者会見を開いた同病院の長谷川奉延病院長は、
「当院の元職員の不祥事により被害に遭われました患者様に対しまして、当院が尊い命を守りきれず、無念な思いでこの世を旅立たれたことに心より深くお詫び申し上げ、ご冥福をお祈りいたします。(中略)病院長として、そして(病院を運営する)法人を代表として、心より、心よりお詫び申し上げます」
と言って1分間ほど近く頭を下げ続け謝罪。続けて会田さんの容体が急変した際の状況を説明した。
古川容疑者に「滅菌カップをどっかに持っていったの?」と尋ねると…
長谷川病院長によると、別の患者の清拭のため4人部屋に入った准看護師のAさんは会田さんから「苦しい」との訴えを聞き、病院全体の看護を管理していた看護師長のBさんや救急外来のスタッフに助けを求めた。
会田さんは前夜10時ごろから尿路感染治療のため右脚のふくらはぎ付近から抗生物質を投与する点滴を受けていたが、本来透明なはずのチューブが、体に入った針のそばまで数十センチに渡って異常に変色していることに駆け付けたBさんが気づいたという。
「看護師長Bは当該点滴ルート(チューブ)を写真撮影して抜去し滅菌カップに収納し、その滅菌カップを足元に置いて新たな点滴ルートを挿入しました」(長谷川病院長)
滅菌カップとは内部が滅菌処理された保管容器のことだ。ところが処置を続ける中でこの足元にあったはずの滅菌カップがなくなっていることにBさんが気づく。
このとき、会田さんへの緊急の措置に関わっていなかった古川容疑者が病室にいることに気づいたBさんは「滅菌カップをどっかに持っていったの?」と尋ねる。すると容疑者は「スタッフステーションに移動させた」と答えたという。
これを聞いたBさんは、容疑者の言葉通りチューブの入った滅菌カップをスタッフステーションで発見。ところが中にあったチューブが、先ほどカップに入れたものとは様子が異なっていた。異常な変色がなく、透明だったというのだ。
長谷川病院長は
「チューブそのものを入れ替えた可能性もあると思いますし、点滴チューブですので何かの液を入れてもう1度押し流せば結果としては同じこと(チューブが透明に)なると思います。その可能性もあると個人的には推測します」
と話す。
写真を見た関係者から「便ではないか」との声も
病院は当時古川容疑者に、滅菌カップをB看護師長の足元から移動させた理由は質さなかったという。
ただこの数時間後の1月30日午前、B看護師長が撮った写真を見た関係者から、チューブ内に便があるのではないかとの見方が出ており、病院側は弁護士を交えた協議を行なって同日中に古川容疑者とA准看護師に対する出勤停止措置をとった。
この時古川容疑者は「気が動転して…」と話し、出勤停止を素直に受け入れたという。
結局会田さんは集中治療室に移されたものの敗血症性ショックが悪化し翌31日午後10時半に亡くなった。病院は2月1日に千葉県警柏警察署に届け出をした。
「事件性が否定できない状況でしたので、被害者の死亡を『異状死』と判断しました。死因には異状死と病死しかなく、異状死とは交通事故や火災、あるいは明らかに外因に関連して起きた場合をいい、病死は元々の病気が悪化して亡くなったというものです。被害者(の死)は元々の疾患では死亡が説明できなかったのです」(長谷川病院長)
スタッフステーションで見つかった、手が加えられた可能性があるチューブと滅菌カップは県警に提出された。また、院内からは別に大便で汚れた点滴チューブは見つかっていないという。
「そうですか、私もう戻れないですね」
届け出を受けた千葉県警は、約2週間後にA准看護師の疑いは晴れたとして病院に「勤務をさせていいです」と伝えている。残ったのは古川容疑者だけだった。
「(出勤停止から)3週間後に電話で連絡を取ると(古川容疑者は)『(自分は)精神的に落ち着いてはきました。ただ、病院の方はどうでしょうか』と聞いてきました。警察が毎日調査を続けられています、と話すと『そうですか、私もう戻れないですね』ということで自主退職しますという話になりました。2月24日付で退職届はこちらに届いております」(会見に同席した福岡隆明事務局長)
長谷川病院長は会見の冒頭で、
「(古川容疑者は)点滴ルートの側管(薬剤を注射器で入れる部分)から大便を注射器にて注入し、殺害した容疑にて7月15日に逮捕された」
と話した。
点滴チューブへの大便混入に注射器が使われたとみていることは、千葉県警はこれまで明らかにしていない。しかし混入方法に具体的なめどをつけて古川容疑者の取り調べをしているもようだ。
看護師だけでなく助産師の資格も持つ古川容疑者は、助産師としても働いた後、昨年1月に柏たなか病院に就職した時の履歴書に、
「看護師としてさらに専門的なスキルを磨ける環境で働きたく、地域密着型で総合病院である貴院を志望いたしました」
と書いていた。
「非常に丁寧に話をされる方」と福岡事務局長が話し、同病院でトラブルを起こしたこともないという古川容疑者の犯行だとするなら、なぜこのような行動に走ったのか。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班