政府は、日本周辺海域の警戒監視を強化するため、海上保安庁向けの無人船の研究開発に来年度から着手する方針を固めた。巡視船や無人航空機などと組み合わせ、活発化する中国の海洋進出に対処する。12月にも「海上保安能力強化に関する方針」を4年ぶりに改定し、無人船の活用を含めた海保の強化策を打ち出す。
来年度当初予算案に関連予算を盛り込む方針だ。年内に改定する安全保障3文書にも、導入の方向性を反映させる。複数の政府・与党関係者が明らかにした。
海保は現在、無人航空機5機を導入して空から警戒監視を行っているが、滞空時間には制限がある。無人船を導入すれば、より長期間にわたり、本土から離れた海域で警戒監視することが可能となる。
来年度から、無人で船を操縦したり、カメラやレーダーで周辺海域を警戒したりする技術について、国内の造船業者などと研究開発に取り組む。不審船を強制的に停船させる仕組みの装備も念頭に置いている。
無人船を巡っては、国際海事機関(IMO)が安全な運航に関する国際ルールの検討を進めており、2032年1月に発効する見通しだ。政府は直後の32年度にも、無人船を使ったモデル実験の開始を目指す。
海上保安能力強化に関する方針は、中国の強引な海洋進出を踏まえ、22年に初めて策定された。沖縄県・尖閣諸島周辺の領海警備などを重点に定めたが、その後も中国公船は、周辺海域への接近や領海侵入を繰り返している。今月4日には、中国海警局が台湾本島の東方海域で、海警船による「法執行パトロールを常態化させた」と発表した。こうした動きを受け、政府は12月にも関係閣僚会議を開き、さらなる能力強化に向けて方針を改定する。
海保は業務が拡大する一方で、人手不足に直面している。船上での勤務時間の長さなどから中途退職者は増加傾向にある。定員(1万4788人)と実際の人数の差(欠員)は、24年度末に665人となり、初めて600人台に達した。
海保は、船舶が比較的少ない海域で無人船を運用し、中国公船への対応や人命救助に有人の巡視船を振り向けることで、職員の負担軽減も図りたい考えだ。