熊本地震 文化財や名勝も被害甚大 県北部も夏休み需要取り込めず… くまモンも活動自粛

最大震度7を観測した熊本地震では熊本県南部を中心に、文化財や名勝など観光地が甚大な被害を受けた一方、比較的被害が軽微とされる県北部の観光地でも客足が遠のくなど、県全体に地震の影響が出ている。県のPRキャラクター「くまモン」も活動を自粛、本来、書き入れ時の夏休みシーズンにもかかわらず、県全体に影を落としている。
「復元不能」
「もはや、完全に復元することは不可能だ」
同県八代市にある国指定名勝「松浜軒(しょうひんけん)」の維持・管理を担う松井葵之(みちゆき)さんは息を吐いた。
松浜軒は八代城主・松井直之が元禄元(1688)年に建立した茶庭。随筆家・内田百閒が好んで宿泊したことでも知られ、地震前の5~6月には、県の名花で庭内に咲く「肥後(ひご)花菖蒲(しょうぶ)」を一目見ようと観光客が訪れていたという。
しかし、今回の地震で主屋にある能舞台や庭内の「林鹿庵(りんろくあん)」と呼ばれる茶室などが倒壊。葵之さんは「どこから手を付けたらいいのかわからない。惨状を受け止めるのが難しい」と漏らした。
宇城市でも、明治創建の町家で、レンタルスペース「風の館 塩屋」として運用されている国登録有形文化財「旧岩崎家住宅」の内壁などが一部破損、無期限休業となっている。
氷川町でも、平安時代に平清盛の側近、平盛俊が建立したとされる宮原三神宮が被害を受けた。同神社では10年前の震災でも鳥居や灯籠が損壊し、修復したばかりだった。禰宜(ねぎ)の広松克房さん(55)は関係機関に被害を報告し、再建への道筋を模索するが「めどは全くたたない」と嘆く。
遠のく客足
震災による影響は被災地だけにとどまらない。
JR九州が運行する阿蘇の絶景が楽しめる人気特急「あそぼーい!」(4両編成)は行楽シーズンは満席が出ることも珍しくないが、客足が遠のいた。地震後の今月4日、「あそぼーい!」の停車駅、JR阿蘇駅(阿蘇市)で午前11時台に降車したのは普段の1割程度のわずか12人。市観光協会の大村和範さん(62)は「書き入れ時なのに人がおらず寂しい」と話す。
阿蘇地方は10年前の熊本地震で、阿蘇市の「阿蘇神社」の楼門(国重要文化財)などが倒壊するなど、甚大な被害を受けた。被災地の苦しみがわかるだけに、地元の観光事業者から「通常営業しているとアピールしづらい」との声が上がる。市の担当者も「被災地のことを考えると慎重にならざるをえない」と漏らす。
県くまモン課によると、県のPRキャラクター「くまモン」も地震後、「当面は活動を自粛する」(担当者)方針。県の担当者は「残念だが、今は震災からの復旧を優先せざるをえない」としている。(土屋宏剛、木下倫太朗)