「日本で一番悪い男が、藏内勇夫だと言われている」。余裕の笑みで記者団に嘯いたかと思えば、急転直下、その男は辞職を表明した。高額海外視察やカツアゲ疑惑だけじゃない、「福岡県議会のドン」の黒い履歴を紐解く。
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大分県玖珠郡九重町。高原に佇むヨーロッパ風のホテルが、藏内(くらうち)勇夫・福岡県議会議長(72)の「定宿」だ。高級ワインを舌の上で転がしながら、後輩議員に講釈を垂れる。
「どんなワインを選ぶかで、議員の格がわかるんだよ」
傍らに並ぶのは、自民党福岡県議団の側近たち。藏内氏を筆頭に、原口剣生、松尾統章、松本國寛、中尾正幸(現在は辞職)の各氏は同県議団の「5人組」と呼ばれ、県政を意のままに操っていた。しかし、「王国」は主を失い、崩壊しようとしている――。
地元記者が解説する。
「藏内氏失脚の端緒は、議員らによる高額の海外視察問題でした。藏内氏も参加した欧州視察で1泊16万9000円のホテルに泊まるなど、ここ数年で2億円以上が投入されていたのです」
「人の弱みにつけこんだカツアゲ」吉松県議の告発
その後、藏内氏には、自ら推進する「ワンヘルス」(人間、動物、環境の共生)政策の講演会で、高額の謝礼を県から受け取っていた問題が発覚。県庁の「部課長会」による議長・副議長の政治資金パーティ券の組織的購入も露呈した。決定打は、2020~21年に議長を務めた吉松源昭県議(58)による告発だ。
「吉松氏は議長就任前、ゴルフ代や車代などの名目で自民党県議団の幹部に金銭を要求され、約2000万円を支払ったと告発。『人の弱みにつけこんだカツアゲ』だと訴えた」(同前)
「僕、なんでしなきゃいけないんだろうか」
音声を公開された中尾副議長は7月に議員辞職。だが、関与が疑われる“本丸”の藏内氏は当初、余裕綽々だった。8月5日、会長を務める日本獣医師会のネパール出張から帰ると、
「ネパールは天国だった」
と発言。さらに、辞職の可能性について問われ、
「僕、なんで(辞職を)しなきゃいけないんだろうか」
と開き直ったのだ。相次ぐ放言も背景に、吉松県議は8月17日に藏内氏の議長辞職勧告決議案を提出。
ところが、決議案に対し、自民党県議が採決中止を求める緊急動議を提案。採決は土壇場で中止になった。
この動議にも、藏内氏への忖度が働いたとの指摘が絶えない。提案した林泰輔県議は藏内氏の元秘書だ。
突如として議員辞職を表明
懸命にドンの顔を立てる形で「辞職決議」を回避したものの、藏内氏は議長辞職のみならず24日、突如として議員辞職を表明したのだった。
混乱の末に起きた辞任劇。しかし、ある議会関係者が続ける。
「マスコミと県民の批判に耐えられず、身を引く形を選んだのでしょう。これまでも藏内さんは側近を動かして“陰”で権力を握ってきた。彼が権力を手離すはずがない。今後も“院政”を敷くのは間違いありません」
辞職してもなお影響力を残す藏内氏とは、どのような人物なのか。
《この続きは8月26日12時配信の「 週刊文春 電子版 」および8月27日発売の「週刊文春」で読むことができる》
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2026年9月3日号)