ノーベル化学賞の受賞が決まった旭化成の吉野彰名誉フェロー(71)は、吉報から一夜明けた10日、妻の久美子さん(71)とともに東京都千代田区のホテルで記者会見した。吉野さんは「反響のすごさに驚いている。(受賞決定を)新聞の1面トップで取り上げていて、現実のことだと実感できた」と改めて喜びをかみしめた。
吉野さんは前夜、梅酒を飲んでぐっすり眠ったといい、朝は「危うく寝坊しそうになった」と明かした。会見前には旭化成(同区)に出社し、多くの社員に拍手で迎えられた。
吉野さん夫妻は学生時代、大学は違ったが、それぞれ所属していた考古学研究会を通じて知り合った。久美子さんは当初、「私はサラリーマンと結婚するのであって、学者の妻になろうとは露にも思わなかった」という。
近年吉野さんはノーベル賞候補と話題になっていた。このため久美子さんは、発表のある10月は、趣味で山へ紅葉を見に行きたい気持ちを抑えていたといい、「受賞は夢のよう。ようやく解放されて安心した」と話した。
ストックホルムでの授賞式(12月10日)前後の祝賀行事「ノーベルウイーク」には夫婦で参加する予定にしている。受賞記念講演について吉野さんは「全く何も心配していない」と話す一方、「私も妻も心配しているのは(晩さん会での)ダンス。今から練習してもうまくなれないし、一つの大事なセレモニーだし、どうしたものか」と笑いを誘った。
会見では、「私が(研究で)苦しいときはいろいろ迷惑をかけた。受賞を一緒に喜んでもらいたい」とねぎらう吉野さんに、久美子さんが笑顔で「最高のプレゼントをありがとうごさいました」と答えるほほ笑ましい場面もあった。
一方吉野さんは日本化学会(千代田区)でも会見し、「自然界には手つかずの宝物がいっぱい残っている。仮説を立てて実現する手段を見つけた人はノーベル賞が手に入ると思う」と若手に期待した。また、ノーベル賞の賞金の一部を、別の賞での賞金を基に化学会が2014年度創設した研究助成事業へ寄付する考えを明らかにした。【信田真由美、岩間理紀、岩崎歩】