世界遺産・高野山 宿坊で集団申告漏れ 1億円超、国税指摘

弘法大師・空海が開いた真言密教の聖地である高野山(和歌山県高野町)で宿坊を営む宗教法人が2025年度に大阪国税局の税務調査を受け、集団申告漏れを指摘されていたことが関係者への取材で判明した。全体の1割を超える規模で申告漏れがあったとみられ、総額は計1億円超という。インバウンド(訪日客)に人気の高野山では宿坊事業が好調だが、宗教法人の会計処理の甘さが露呈した形だ。
国税当局が宗教施設が集う高野山一帯の税務調査に乗り出すのは異例。引き続き調査する方針とみられる。
高野山は約1200年前に空海が開いた。1000メートル級の山々に囲まれた山上盆地に、総本山・金剛峯寺をはじめとする117の寺院が建ち並ぶ。51の宿坊もあり、それぞれ宗教法人が運営。宿泊や修行体験ができるようになっている。
関係者によると、国税当局は25年度、高野山の宿坊事業の実態を把握するため、宿坊を手掛けているおよそ50の宗教法人の中から十数法人を調査。半数以上で総額計1億円超の申告漏れがあったことを把握した。26年度も複数の宗教法人で申告漏れが確認されているという。
宗教法人では、布施やさい銭、戒名料といった宗教活動にかかわる収入は課税されない。一方で、宿坊のような営利目的の事業は課税対象となる。非課税部門と課税部門の収支が混在して所得が報告されることがあり、この場合は申告漏れを指摘されることがある。
高野山の調査では住職側の私的な支出を宗教法人の経費に計上して、宿坊の所得を過少申告していたケースがあり、追徴税額は計約6000万円に上った。複数の歴史的寺院も含まれており、いずれも修正申告に応じたとされる。
このうち金剛峯寺の西隣にあり、熊本藩細川家ゆかりの寺として知られる総持院では、住職の家族が22~24年の3年間に宿坊で得た収入や檀家(だんか)らから受け取った布施を私的に支出していたという。
国税局はこれらを住職の家族の「隠し給与」とみなし、所得税の源泉徴収漏れを指摘。申告漏れは約9000万円で、重加算税を含めた追徴税額は約4000万円に上るとみられる。総持院は全額を納付した模様だが、取材に対し「一切コメントできない」とした。
瞑想(めいそう)や精進料理に枯れ山水――。日本の精神文化を体験できる高野山の宿坊は訪日客に人気のスポットで、04年に世界遺産に登録されたこともあり、高野山全体の外国人宿泊客は25年に過去最多となる11万7000人まで増えた。質素な宿泊施設というイメージとは一線を画す、高級旅館・ホテル並みの宿坊も現れている。【飯塚りりん】