福岡市長選(11月1日告示、15日投開票)への立候補表明が相次いでいる。24日には新たに1人が記者会見し、近く2人も予定。過去最多をさらに更新し、新人12人が出馬する見通しとなった。これまで「1強」だった高島宗一郎市長の突然の不出馬表明や、福岡県議会問題も一因で、乱戦となるのが確実な情勢だ。市選挙管理委員会の準備に影響が出ているほか、票の分散で法定得票に達せず、再選挙となる可能性も取りざたされている。(原聖悟、小波津晴香、沢井友宏)
一身上の都合により、議員の職を辞職したい旨、許可いただきますようお願いします――。
16日、急きょ開かれた福岡市議会の本会議。異例となる市議3人の辞職願が連続で読み上げられた。来春の改選を待たずに辞める理由は、約1か月半後に告示される市長選への立候補だ。24日までに記者会見で出馬の意向を示したのは計10人となった。市長選の候補者数は高島氏が初当選した2010年の8人を超えて、過去最多となる見込みだ。
相次ぐ立候補表明の背景には高島氏の不出馬がある。元民放アナウンサーで、抜群の知名度を誇り、過去3回の市長選で、最多得票を連続で更新。22年の前回選では約33万票を獲得した。「1強」の高島氏が自身のSNSで今期限りで市長を退く意向を示した8月23日以降、表だった動きがなかった候補予定者が次々と名乗りを上げた。新人のみの選挙戦は同市長選では約40年ぶりとなる。
高島氏自身は後継について「現時点では何も考えていない」としている。
金銭授受疑惑などで揺れる福岡県議会の問題も乱立に拍車をかけている。
「福岡は裏金問題の震源地。満を持して福岡市長選に出そうと思った」。14日に福岡市役所で公認候補予定者と記者会見した、地域政党・減税日本の河村たかし代表(前名古屋市長)はこう力を込めた。18日には公認候補予定者の擁立を発表した日本保守党の百田尚樹代表も福岡を訪れた。
いずれも九州の首長選で候補を擁立するのは初めて。全国ニュースで福岡県議会の「政治とカネ」の問題が取り上げられる中、これまで県議会に議席がなかった党にとっては、新たな選択肢として政党の考えや候補者を知ってもらう好機でもある。市議の一人は「来春の統一地方選の前哨戦の場になってきている。ここ(市長選)でしっかりと有権者にPRできれば、来年へとつながるからだろう」と分析する。
県議会の問題では、市民から既存政党への厳しい批判が寄せられている。このため、政治経験がない新人にとっては追い風で、立候補表明が相次ぐ一つの要因にもなっている。
市選管は、候補者がこれまでで最も多かった10年の市長選を参考に最大8人を想定し、選挙費用として6億7500万円を計上している。選挙ポスター用の掲示板や、選挙運動の際に市選管から各候補者に渡す選挙カーの乗員用の腕章といったいわゆる「七つ道具」の準備を進めてきた。
相次ぐ立候補表明を受け、市選管は追加発注する方針だ。ただ、候補予定者が増えていく現状に、石田祐介選挙課長は「掲示板はどこまで増やせばいいのか。足りないということはあってはならないので、見極めて対応したい」と話す。
候補者の乱立で、法定得票(有効投票総数の4分の1)に届かなかった場合に行われる再選挙を指摘する声も出ている。総務省によると、再選挙になった首長選はこれまでに7回。政令市では03年に7人が争った札幌市長選がある。
再選挙は原則、異議申し出期間を経て50日以内に行われるが、17年の千葉県市川市長選では異議を受けて投票用紙を再点検したため、再選挙までに5か月がかかった。その間に市長の任期が満了し、トップ不在が4か月続いた。
福岡市の幹部は「再選挙になれば、あらゆるところに影響が出る。様々な想定を行っているが、新年度予算の編成に遅れが出る恐れもある。一度で決まってほしい」と気をもんでいる。