宗教団体「エホバの証人」の信者計13人が無輸血手術を断った国公立大病院や県立病院に損害賠償を求めた訴訟4件が、各地の地裁で係争中であることが28日、産経新聞のまとめで分かった。いずれも請求額は患者1人当たり330万円。輸血の事実上解禁の訴訟へ影響について、教団は「訴訟は個人として提起されている」と説明を避けた。
提訴されているのは、名古屋市立大付属東部医療センター(名古屋市千種区)▽滋賀医科大付属病院(大津市)▽熊本大病院(熊本市中央区)▽沖縄県立の中部病院(うるま市)と八重山病院(石垣市)―の運営者。
原告は計13人で、いずれも手術や組織検査などに際し輸血同意書への署名を求められたものの、信仰上の理由で署名しなかったため、治療を断られたという。差別であり、精神的苦痛を被ったと主張している。
エホバの証人信者の輸血拒否に対する医療機関の方針は、可能な限り無輸血に努力するが他に救命手段がない場合は輸血する「相対的無輸血」と、どんな事態になっても輸血しない「絶対的無輸血」受け入れに分かれ、大多数が前者。
エホバの証人は18日、赤血球、血漿、血小板などの成分輸血について信者の自己判断で認めると発表した。全血輸血は引き続き禁じるものの、現在の輸血はほぼ100%が成分輸血となっている。
4件の訴訟の1人当たりの請求額が同額であることは教団の支援をうかがわせるが、教団日本支部は取材に対し「組織として関与しているものではなく、訴訟を担当している代理人にお尋ねいただきたい」と回答した。
エホバの証人問題に詳しい田中広太郎弁護士は「報道を見る限り、原告はエホバの証人信者であることを理由に治療を拒否したのは差別的取り扱いだと、憲法上の平等権の侵害を主張しており、民事訴訟としては珍しい。児童虐待に関する指針を巡って教団が国を訴えた訴訟でも平等権を理由の一つにしており、一連の訴訟を教団が指導せず、全くの偶然であると考えるのは難しい」と話している。(渡辺浩)