政府は2日付で、2026年秋の褒章受章者736人(うち女性160人)と25団体を発表した。3日に発令される。
学術研究や芸術、スポーツなどの分野で活躍した人に贈られる紫綬褒章には、現代美術家の奈良美智さん(66)や、国立天文台教授の本間希樹さん(55)ら13人(同1人)が選ばれた。
各職業分野で一筋に励んだ功績をたたえる黄綬褒章には、手漉(てすき)和紙製作技術者の柳瀬晴夫さん(70)ら264人(同17人)、福祉や教育など公益に尽くした人への藍綬褒章は443人(同132人)だった。
人命救助に尽力した人が対象の紅綬褒章は4人(同1人)、社会奉仕活動に貢献した緑綬褒章は12人(同9人)と25団体だった。
世の中と距離置き 描く…現代美術家 奈良美智さん 66
「どちらかといえば、世の中の価値観とは少し距離を置いてやってきたつもりです。そんな自分が国から褒められるのは、なんだか不思議な感じがします」。独特な表情の子どもや犬の作品で親しまれる芸術家は、率直な感想を寄せた。
青森県出身。子どもの頃は「周りに何もないような環境」で、ラジオから流れる外国の音楽を聴き、「遠くの世界」に思いをはせた。「分からないことは自分で想像するしかなかった。絵を描くことも、その延長にあったんだと思います」
自身の制作姿勢について、「昨日より今日、少しでも納得できる絵が描けたかどうか」が大事だと強調する。何事も早く結果を出すことが求められる世の中にあって、「絵を描くことくらいは、遠回りしてもいい。これからも、少し世の中とずれたところで、自分の絵を描いていきたいです」と抱負を語る。
宇宙の不思議 切り開く…国立天文台教授 本間希樹さん 55
ブラックホールの撮影に世界で初めて成功した日米欧などの国際研究プロジェクトで、日本側のリーダーを務めた。「多くの仲間と成し遂げた成果。全ての方に感謝したい」と語る。
国立天文台が運用に携わるアルマ望遠鏡(南米チリ)など世界6か所で宇宙からの微弱な電波を捉え、観測データをつなぐことで一つの仮想的な巨大望遠鏡を作った。画像処理ソフトを開発しデータを可視化する過程にも貢献した。
2019年に公開された画像には、太陽の65億倍の質量を持つ巨大ブラックホールが黒い穴のように浮かぶ。「宇宙の不思議さの象徴のような天体」がモニターに映し出された瞬間は、思わずガッツポーズした。
まだ見ぬ「宇宙人」が発した電波の受信など、電波天文学者のテーマは尽きない。「引退するような年ではない。次の『フロンティア』を探しに行きたい」
越前の技 未来へつなぐ…手漉和紙製作技術者 柳瀬晴夫さん 70
「職人たちが地道な努力を続け、受け継いできた越前和紙そのものへの評価だと思う」。控えめに、受章の喜びを語った。
古代から和紙の産地として栄えた福井県越前市の出身。大学で染色や繊維について学び、卒業後は和紙製造の家業を継いだ。以来、筆が滑らかに走る最高級の手漉和紙「越前鳥(とり)の子紙(こし)」の製作に携わってきた。
和紙の需要が激減する中、「このままでは技が絶えてしまう」と、2015年に保存会を設立。会長として後継者の育成や伝統の継承に力を注いだ。
活動は実を結び、越前鳥の子紙は昨年、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に追加登録された。
入手が難しくなっている原料「雁皮(がんぴ)」の栽培にも取り組む。「越前鳥の子紙には、北陸の風雪に耐えて育った雁皮が欠かせない」。和紙の未来を支え続ける。
【紫綬褒章受章者】(敬称略、年齢は発令日の3日現在)
国立天文台教授 本間希樹(55)▽農業・食品産業技術総合研究機構エグゼクティブリサーチャー 山本万里(65)▽現代美術家 奈良美智(66)▽理化学研究所創発物性科学研究センター副センター長 岩佐義宏(67)▽順天堂大教授 加藤忠史(63)▽慶大副学長 北川雄光(66)▽東大教授 佐藤仁(58)▽東大教授 染谷隆夫(58)▽東大教授 胡桃坂仁志(59)▽大阪大名誉教授 中谷和彦(66)▽大阪大教授 竹田潔(59)▽大阪大教授 中野貴由(59)▽九州大名誉教授 君塚信夫(66)