「地面師はなくならない」不動産のプロが“10億円”規模でだまされ続けるワケ…欲望絡み合う「大型詐欺」の裏側

2017年、積水ハウスが地面師グループに55億5000万円をだまし取られた事件を追った『地面師vs.地面師 詐欺師たちの騙し合い』(講談社)の著者・森功さんと、『地面師連絡役カトウ』(小学館)の著者・河合桃子さん。事件の当事者を取材してきたノンフィクションライターのふたりが、Netflixドラマ『地面師たち』と現実の違い、そして不動産のプロまでだまされてしまう理由を語る。【前後編の後編。前編から読む】
* * * ──ドラマ『地面師たち』をご覧になって、現実とは違うと感じた部分はありますか。
森「たくさんありますよね。ドラマですから。ただ、地面師たちの恐ろしさとして、後ろに暴力団がついていたり、暴力団上がりの人間がいたりする。そういう怖さをちらつかせるというのは、確かにあるんですよ」
河合「私が取材した末端の連絡役・カトウ(仮名)にも、兄貴的な存在の人物がいたんですが、その人物について暴力団との関係を聞かされていたので、より断れなかったということはあったようです。
さらに、土井(淑雄受刑者)は企業のトップや警察周りなどにも知り合いがいて、とにかく人脈が広いと。だからこそ、『こんなに器のでかい男の人は初めてだ』と、尊敬してしまい、土井の言うことは聞こうと思ったようですね」
──ドラマでは地面師グループのメンバーが集まって会議をするシーンがたびたび登場しますが、おふたりの本を読むと、実際には全員が同じ情報を共有していたわけではないという事実が浮かび上がってきます。
森「リスク管理というか、あんなふうに一堂に会して会議をして、その現場を当局に押さえられたら一発でアウトなので、そういうことはやらない。
「なりすまし役」やそのなりすまし役をスカウトする「手配師」を連れてきたのは、主犯格とされる内田マイク(受刑者)で、そのなりすまし役のグループと、同じく主犯格とされるカミンスカス(操受刑者)たちとは直接連絡を取れないようにして、連絡は全部、内田がやる。そういう縦割りの仕組みをつくっているんです。
なりすまし役、つまり実行犯がいなければ詐欺事件としては成立しないわけです。だから『知らなかった』という言い訳が成り立つ。彼らはそれを利用しているわけですね」
河合「お金の取り分についても、みんなが知らされているわけではないんです。積水ハウスの事件では、手付金は全額、内田マイクが持っていったという話ですが、それもカトウは後から知ることになる。