九州北部の記録的大雨で周囲が冠水し、孤立していた佐賀県大町町の順天堂病院について、県は30日、大型車両の通行が可能になったとして孤立状態は解消したことを明らかにした。
国土交通省九州地方整備局などがポンプ車を使い、29日から夜通しで病院周辺の排水作業を進めた結果、水位が大型車両や徒歩で通行できるまで下がった。
30日朝には陸上自衛隊の大型トラックが、近くの鉄工所から流出した油混じりの泥水の中を進み、交代要員の医療関係者や食料を乗せて病院に到着し、物資などを運びこんだ。油のにおいが鼻をつく病院周辺では、自衛隊員が吸着マットで油を除去する作業を続けた。
流出した油については、大町町を流れる六角川に流出しないように地方整備局がオイルフェンスでせき止めている。だが、六角川の河口付近の有明海では油膜が広範囲に確認されており、地方整備局と県は清掃船計5隻でかき混ぜて揮発させる作業を進めている。一方、佐賀県などによると、30日午前7時ごろ、同県伊万里市にある別の鉄工所の油が近くの伊万里川に流出しているのを新たに消防が確認した。漏れた油は少量で、県などがオイルフェンスを設置して油の回収を進めている。この鉄工所も28日の大雨で浸水していた。
西日本高速道路九州支社によると、佐賀県武雄市東川登町の長崎自動車道・武雄ジャンクション付近で発生した本線4車線の路面変形は復旧のめどが立っておらず、武雄北方―嬉野両インターチェンジ下り線の通行止めが続いている。
九州北部地方の大雨は秋雨前線が南下したため峠を越えたが、長崎県や佐賀県では降り始めからの降水量が500~600ミリを超えているところがあり、福岡管区気象台は引き続き、土砂災害に厳重に警戒するよう呼び掛けている。【浅野孝仁、竹林静、蓬田正志】