九州北部を襲った記録的な大雨は、避難者が6県、1900人を超え、死者3人を出す大災害となった。大雨で冠水し孤立状態になった佐賀県大町町の「順天堂病院」には、200人以上が取り残された。自衛隊や町がボートなどで懸命の救助活動を行った。
順天堂病院は、地区の避難場所に指定されていた。このため、患者やスタッフに加えて、病院に自主避難した住民らも取り残されることになった。
それにしても疑問なのは、六角川のすぐそばにある順天堂病院が避難場所に指定されていたことだ。大雨による冠水は想定できたはずなのに、どうして避難場所になっていたのか。
■専門家「ハザードマップは怪しい」
立命館大環太平洋文明研究センター教授の高橋学氏(災害リスクマネジメント)が言う。
「大病院は、医者や看護師がいて、薬やベッドもあるので、避難場所に指定されることが多い。ただ、河原沿いに立地していることが少なくありません。広い土地が確保できることに加えて、感染病の懸念など“迷惑施設”とみられているためです。例えば、京大病院、京都府立医大病院は鴨川沿いにあります。今回のように大雨による冠水のリスクが伴うので、避難場所としてはふさわしくありません」
「病院に逃げれば安全」は、大きな誤解なわけだが、危険な避難場所は病院だけではない。
「ハザードマップで指定されている避難場所の8割は怪しいとみています。とりわけ、比較的新しい学校、体育館、公民館などは、土地の確保などさまざまな制約の中で建てられていて、災害に強い場所という観点が抜けているケースが多い。自分の身を守るためには、自治体が指定している避難場所であっても、本当に災害時に問題がないのか、平時から想定しておく必要があります。今回の順天堂病院の冠水から、そういう教訓を読み取るべきです」(高橋学氏)
早速、最寄りの避難場所の安全は、一度しっかり確認したい。