消費税2ケタ時代が始まり、つくづく思ったのは、責任感や国民への奉仕の精神を持たない人たちが政策を担当すると、おかしなものが出来上がってしまうということです。
消費税は本来、財政再建のために導入され、順次、税率が引き上げられるのも財政健全化のためだったはずです。しかし今や、安倍政権は自分たちのやりたいことのために増税している。突然、持ち出してきたのが、「幼児教育・保育の無償化」です。今回の増税分の半分を、このいかにも子育て世代向けの“点数稼ぎ”くさい政策に充てることになってしまいました。しかも、当事者たちが本当に欲しい制度ではないから、実は点数稼ぎにさえなっていない。支離滅裂です。
さらには、増税による消費落ち込み対策として、ポイント還元を導入し、ついでにキャッシュレス化も推進してしまえ、みたいな、訳の分からないことも起きている。
世のため、人のため、という本気の問題意識が欠如しているので、増税効果を自ら相殺するようなことになってしまうのです。
食品を軽減税率にして8%に据え置いたのも、一体、誰のための政策なのか。突き詰めて検討されたわけではないでしょう。「軽減税率なら食品」と短絡的に決めただろうにおいがプンプンする。食品は多様で、高額なものもあり、購入者は金持ちだったりする。逆進性の排除には全く役に立たない可能性があります。
そう考えると、消費増税直前の9月末に、トイレットペーパーをいくつも買い込むという消費行動に追い込まれた私たちは、本当に哀れだと思います。無責任な政策が人々を不自然な行動に追い込んでいく。
本来、政策は、不自然なことやつじつまの合わないことを修正し、自然でバランスの取れた状態に戻すために存在している。経済・社会に対する「外付け装置」として均衡の保持と回復に努める。それが政策の役割です。ところが、そういう役割のはずの政策が、逆に人々の生活を狂わせているのが現状。これは酷く恐ろしいことです。
コトは消費増税の問題に限りません。金融政策の失敗もそうです。直近では、関西電力の金品受領という驚くべき事案も明らかになりました。これも日本の原子力政策の怪しい体制に絡んで噴出した問題だといっていいでしょう。
そして、もうひとつ。老後に2000万円不足するという問題です。政府の意図するところではないと金融庁の報告書は撤回されましたが、「貯蓄から投資へ」という方針は、人々を危ない橋へ追いやる間違った政策です。普通の人たちは、健全な貯蓄によって生活を維持できることを望んでいる。それが可能な状況をつくっていくことが、本来の政策の役割のはずです。
政策が人々の生活をよりよくするものになっていない。むしろ私たちは政策の餌食になってしまっている。
ロクでもない政策とその背後にある安倍政権の下心から、日本の経済・社会を救出しなければいけない状況になってきました。「日本経済救出大作戦」に踏み切る必要が出てきたと思います。
(浜矩子/同志社大学教授)