台風19号を避難所でしのごうとしたホームレスの男性を東京都台東区が拒んだ問題で、生活困窮者の支援に取り組む一般社団法人あじいる(今川篤子代表)は21日、対応の改善を求める服部征夫区長宛ての要望書を区に提出した。31日までに文書での回答を求めている。【川村咲平】
要望は5項目。内容は、被害者に届くよう謝罪▽「人の生命や身体を最優先して保護する」という災害対策基本法の理念を守る▽ホームレスの人に関わる生活保護、教育、人権行政が適正だったか全庁的に検証し、改善してほしい――など。賛同する団体の関係者も含め約20人が、区長室と危機・災害対策課で担当者に手渡した。
「あじいる」の中村光男さん(68)は「災害対策にとどまらず、行政全体を問い直す問題だ。区は根本的に改めて」と話した。区危機・災害対策課の飯田辰徳課長は取材に「真摯(しんし)に対応したい。当事者の生の意見を聞きながら(善後策を)検討したい」と述べた。
一方、服部区長は同日の区議会決算特別委員会の冒頭で「不安な夜を過ごされた方がいたことについて大変申しわけありません」と改めて陳謝した。「路上生活者などが来ることを想定できなかった」とも述べた。
秋間洋委員(共産党)が「社会的弱者に差別的行為を行ったのでは」とただすと、「従来の避難所(運営)マニュアルに路上生活者への対応を定めておらず、想定外の事態が発生した。教訓を重く受け止め、一つ一つ解決する」と答弁した。
この問題は、台風19号が接近していた12日に区立忍岡小の避難所を訪れた2人の当事者に対し、区が「住所がない」との理由で受け入れを拒否したことに端を発する。問題が表面化して参院予算委員会で取り上げられた15日、区は区長名で「対応が不十分だった」と不手際を認めるコメントを発表した。