10月1日の消費税増税に合わせて始まるポイント還元制度は、小売業界の「値下げ合戦」を引き起こしている。
東京五輪開幕前の2020年6月まで9カ月間実施し、一定の消費刺激効果が期待される。一方で、終了後は反動で消費が減る恐れがあるほか、参加店舗が少ない地方で消費者が恩恵を十分に享受できないなど、課題もある。
ポイント還元は、消費者が中小の小売店や飲食店などで電子マネーといったキャッシュレス決済を使うと、金額の5%がポイントなどの形で国から戻ってくる仕組み。
コンビニやファストフードなど大企業のフランチャイズ加盟店でも2%が還元される。大手の直営店は対象外だが、コンビニでは各社の「自己負担」で2%還元する。後日ではなく、その場で発生したポイントを使えるようにする動きもあり、実質的な値引き策が広がりつつある。
都内の人気住宅街にほど近い杉並区の「高円寺パル商店街」。約100店のうち、半数近くが制度への参加を決めた。8月下旬には世耕弘成経済産業相が訪れて自らポスターを配り、ポイント還元をアピールした。同商店街の河原一理事長は「(キャッシュレス決済は)これから増えるはずだ」と盛り上がりに期待する。
大和総研の神田慶司シニアエコノミストは、インターネット通販なども対象となることから、「多くの消費者が恩恵を受け、消費をある程度下支えする」とみる。ただ、効果があればあるほど、反動も大きくなる。神田氏は、制度終了前に駆け込み購入が起き、来年7月以降に需要が落ち込む恐れもあると警告する。
一方、ポイント還元制度に参加するには店側が国に登録を申請する必要があるが、その数は地方によって開きがある。8月21日時点で登録を申請した店は東京で6万5000、大阪で3万6000を超えたが、鳥取や高知、秋田、佐賀など3000店未満の県も目立つ。
店側からは「キャッシュレスは簡単だからこそ、怖い」(福島県の山小屋経営者)といった不安の声も漏れる。対象になり得る中小店舗は全国で200万とされ、8月29日時点で申請数は51万店となっている。