台風の夜「なぜ息子帰した」=市職員犠牲、父の無念-福島・南相馬

台風19号の対応に当たった福島県南相馬市職員の大内涼平さん(25)は、帰宅途中で川の増水に巻き込まれて亡くなった。
風雨が強まる中、職場で帰宅を指示されたといい、取材に応じた父敏正さん(56)は「台風の夜になぜ帰したのか。掛け替えのない息子を失い、本当に悔しい」と話した。
敏正さんによると、涼平さんは台風が迫る12日、勤務先の小高交流センターで避難所開設作業を担当した。上司から「翌日の出勤のため」と帰宅を指示され、13日午前0時半ごろ退庁。約10分後に「車が水没し、脱出した」と職場に連絡があったのを最後に行方不明となった。
自宅にも「今から帰るから、玄関の鍵を開けておいて」と電話があったが、午前5時40分ごろ自宅近くの農地で遺体が見つかった。かっぱ姿で、目立った傷はなかったという。
涼平さんは市内の商業高校を卒業後、専門学校を経て市職員になった。「地元のために働きたい」と話し、敏正さんは「原発事故後、若者は離れる人が多く、うれしかった」と振り返る。
「真面目で素直で、優しすぎるくらいの性格」だった涼平さん。「仕事がつらい」と漏らすこともあったが、敏正さんは「生きるための仕事だから、大変なのは当たり前だ」と励ましてきた。今年4月、小高交流センターへ異動。原発事故の避難先から帰還した住民と接する仕事にやりがいを感じ、「生き生きしていた」という。
週末に涼平さんと晩酌するのが何よりも楽しみだったといい、時代劇のDVDを一緒に見ながら語り合うことも。「まだ25歳で、これからというところで」と言葉を詰まらせた。
遺体が発見された日、門馬和夫市長が自宅を弔問に訪れたが、「なぜ台風の夜に帰宅させたのか」という疑問が拭えなかった。「何を言っても帰ってこないし、本人が一番悔しいと思う」と話した。