なぜ石破茂はビームスのスーツで総裁選に出馬したのか?

10月29日の発売とともに、業界内外を騒がしている異色の コラボ増刊「ビームス×週刊文春」 。そのなかから、総裁選にビームスのスーツで出馬した自民党・石破茂氏の特撮ページをご紹介します。
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タイトなスーツでレンズに鋭い眼差しを向ける大物政治家。永田町とビームス、縁遠い世界に思えるが……。“ポスト安倍”候補が語る「総裁選とスーツと私」。

「私にとって、スーツは作業着そのものですよ」
撮影が終わると、石破茂はそう言って少し頬を緩めた。1年365日、常にスーツを身に纏う。
「病気で寝込むこともないし。スーツじゃないのは、人間ドックに入っているときくらいじゃないの」
“作業着”が定番になったのは、ずっと遡って、日吉でキャンパスライフを謳歌していた頃。
「大学1年の秋まではシャツやカーディガンでそれなりにオシャレしてた。でも性格がいい加減だからか、カッチリした服装でないと落ち着かなくてね」
以来スーツ歴45年――バリバリのスーツの達人である。それにしても、大学1年でスーツは“浮きそう”だ。
「家内も大学の同級生ですから、『変な人』って印象で見てたんじゃないの。でもスーツって楽ですもんね。ポケットが多くて色んなものが入るでしょ」
今も仕立てるとき、ポケットにはもっぱらこだわる。
「ガラケーにスマホ、財布、JRパス。それに名刺は出先でいつでも配れるように。だからポケットをいっぱい作ってくださいってお願いしますね」

見た目よりもまず使い勝手。「スーツは作業着」を地で行く達人。
「手帳はないけど、分厚い日程表も持ち歩いてる。一番先の予定は再来年まで入っているんじゃないかな」
再来年といえば、自民党総裁選ですね、と尋ねると「あ、そうなの」と受け流される。
達人の転機は昨年9月に訪れた。
「総裁選に出ることになって、演説会でも記者会見でも、やっぱり見た目が大事だと。そしたら小渕優子議員に『石破さんはビームスでも着るといいのにね』って言われたの」
え、ビームスって何? という状態だったが、薦められるがまま、特急でネイビーの1着をオーダーする。
「ビームスで総裁選の壇上に上がったら『オーッ』ってどよめきが起こった」
担当したビームス・高橋秀樹は「まず肩幅を合わせて、着丈をコンパクトに。軽快感を出しました」と振り返る。
「最初着たとき、窮屈だなと思っちゃった。でも、カッコいいじゃん、石破さんもやればできるじゃんって(笑)。ここは勝負ってときの……勝負服だね」
ポスト安倍として名は挙がるものの自民党では冷や飯を食う。アップデートされた作業着で石破茂は再び戦う。
石破 茂 Shigeru Ishiba1957年2月4日、鳥取県出身。79年慶大法卒。86年に衆議院議員に。以来11期連続当選。防衛大臣、農林水産大臣、党政調会長などを歴任。昨年、自身3度目の総裁選出馬。「突然の冠婚葬祭に備えて」所有するスーツの8割は濃紺。残りはチャコールグレー。
Photographs by Yasutomo EbisuStyling by Hideki Takahashi, BEAMSHair & Make-up by KENSHIN for Epo Hair Studio
(「週刊文春ムック」編集部/文春ムック 週刊文春が迫る、BEAMSの世界。)