首里城の火災では、建物群を取り囲む城壁が消火活動を妨げ、防火設備も十分に機能しなかった。
那覇市北東部の高台にある首里城は城壁に囲まれ、火元とみられる正殿まで消防車両が近づくことはできなかった。消防隊員はホースを100~200メートルほどつないで消火にあたった。
那覇市消防局などによると、正殿の高さでは消防法に基づくスプリンクラーの設置義務はなく、設置されていなかった。火災に気づいた警備員が消火器を持ち出したが、火の勢いが強くて使えず、屋内外にあった消火栓も使用することはできなかったという。
正殿にはほかに、他の建物からの延焼を防ぐため、外壁に沿ってカーテン状に水を噴出する「ドレンチャー」が設置されていたが、今回の火元は正殿内部とみられ、市消防局は「本来の効果を発揮できなかった可能性が高い」とする。
木造の歴史的建造物は火の回りが早いため、消防法は国宝や重要文化財に指定された建物について、面積にかかわらず消火器や自動火災報知機の設置を義務づけ、文化庁も消火設備の整備に力を入れている。
しかし、首里城は戦前、正殿が国宝に指定されていたが、1945年の沖縄戦で全焼。城跡の上に復元され、今回の火災で焼失するなどした正殿など7棟は、いずれも戦後に復元された。このため文化財保護法に基づく文化財には指定されておらず、防火対策の対象にはなっていなかった。