毎朝6時からニュース番組(飯田浩司のOK!COZY UP!)を担当していますが、最近は閣僚発言の揚げ足取りが大きく報道されていて、ニュース選びを惑わせます。法律に抵触するようなものならまだしも、発言の一部を切り取って批判するのは、広く世論を喚起すべきマスコミとしてどうなんでしょうか?
本人が撤回して謝罪していますが、萩生田光一文部科学相の「身の丈」発言についての騒ぎ方には違和感を覚えました。そもそも、この発言はBSフジの2時間番組で、来年度から大学入学共通テストに導入予定だった「英語の民間検定試験」について、さまざまな角度から掘り下げるなかで出たものでした。
萩生田氏の発言は、現状でも地方と都市部には機会や所得による格差が存在することを指摘しながら、民間検定試験導入によって新たに出てきた問題ではないので、それぞれが、その環境下で力を発揮してほしいという意味だと、私は放送を見て理解しました。格差を容認して、不利な環境下の人は諦めろという趣旨だったとは思えません。
ここから民間検定試験や大学受験のあり方について議論が深まればいいのですが、どうも一部のメディアは大臣の資質を問い、辞任に追い込むことに血道を上げているように見え、残念です。発言よりも政策に注目してほしいのですが…。
確かに、地方と都市部には機会や所得による格差が、公然の秘密のように存在します。地方受験も増えたとはいえ、地方に住む学生にとって、大学が集中する東京や近畿圏に出てきて試験を受けるのは負担です。学習塾に通う生徒の方が、学校での授業の進捗(しんちょく)に左右されずに勉強ができるので、有利であることも否めません。
ただ、今回の英語の民間検定試験が今までと決定的に違うのは、受験のタイミングが「高校3年の年明け」から、「4月から12月」に前倒されることです。
正直、裕福な家庭や都市部の生徒は、学校以外にも学習の機会が豊富にあり、正月までは大きく先行しているケースが多かった気がします。一方、低所得層や地方の公立高校、部活動に熱心だった生徒は、高校3年夏以降に猛勉強して、年明けにググッと成績が伸びて合格を勝ち取ったりしていました。この一発逆転が可能だったのが、これまでの試験体系です。
今回の変更は、試験が大幅に前倒しされ、高校2年までの達成度をより問うことになります。「今までがすべていい」とは言えませんが、低所得層や地方の公立高校の生徒には厳しそうです。
仮に、4月に試験を受けようと思えば、運動部などを高校2年のうちに引退しなくてはならなくなります。高校生活そのものが一変する可能性も孕(はら)んでいるのです。
萩生田氏は1日、来年度からの試験導入延期を発表しました。一部メディアは延期に追い込んだと盛り上がるでしょうが、政策議論が置き去りになっている気がしてなりません。
■飯田浩司(いいだ・こうじ) 1981年、神奈川県生まれ。2004年、横浜国立大学卒業後、ニッポン放送にアナウンサーとして入社。ニュース番組のパーソナリティーとして、政治・経済から国際問題まで取材する。現在、「飯田浩司のOK!COZY UP!」(月~金曜朝6-8時)を担当。趣味は野球観戦(阪神ファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書など。