五輪期間中ホテル暴騰 宿泊施設足りない? 直前放出の可能性も

2020年東京五輪・パラリンピックの開催まであと1年を切る中、大会期間中の宿泊施設料金が東京周辺で高騰している。過去の五輪でもこうした現象が起きており、会場周辺のホテルを大会組織委員会が仮押さえしていることも影響しているとみられる。東京五輪でも、海外や地方から訪れる観光客やボランティアは宿の確保に苦労しそうだ。
インターネットのホテル予約サイトで、五輪開会式が行われる来年7月24日前後の東京23区内にあるホテルを検索すると、通常は2人2泊で2万円弱の格安ビジネスホテルが、軒並み7万円超となっていた。
安価のはずのカプセルホテルも高騰している。今夏のお盆シーズンすら2人2泊で2万円台だったのに、開会式の時期は5万円超と、倍以上の価格に。普段は1万円以下も多くバックパッカーにも人気のあるゲストハウスでも、6万円台まで値上がりしている。
背景には、開幕1年前からホテルの“予約”が始まっているという現実もある。大会組織委は関係者用に大規模なホテルチェーンなどの計4万6千室を仮押さえ。予約サイトでは都内の有名ホテルなどは、すでに「選択した日程のお部屋が売り切れました」などと表示されるところが多い。
多くの競技が開催される東京・有明地区の「東京ベイ有明ワシントンホテル」のホームページでは、関係者の宿泊を優先するため、来年7月10日から8月11日までの予約受け付けを今年11月まで休止すると記載している。
こうした宿泊需要の高まりは、五輪開催地では珍しくない。昨年2月の韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪で多数の競技が開催された江原道(カンウォンド)東部の都市・江陵(カンヌン)でも、宿泊施設の価格高騰が話題となった。期間中に滞在した都内の男性会社員(42)は、普段なら1人1泊7万ウォン(約7千円)程度のゲストハウスに30万ウォン(約3万円)で宿泊。「最大で普段の10倍になっていたところもあった」と振り返る。
ただ、過去には、高騰していた“宿泊相場”が開幕直前に大幅な「値崩れ」を起こした例も。2012年のロンドン五輪でも客室がキャンセルになったり、新たなホテルがオープンしたりしたことで、開会直前の時期には宿泊代金の相場が25%も下落した。旅行代理店大手JTBの担当者は「インバウンド(訪日外国人客)の増加でいま相場は上がっているが、直前に(値崩れ)現象が起きる可能性がある」と話した。

「チケットをとるのも大変だけど、そもそも宿を押さえるのが一苦労」。静岡県に住む主婦(64)は、こうため息をつく。
東京五輪では、バスケットボールなどの球技をいくつか観戦したいと思っているが、「(狭い)カプセルホテルでは逆に疲れてしまいそう。適当な泊まる場所がとれなければ、大変だけど、日帰りで行くしかないかも」と話した。
頭の痛い宿泊施設の価格高騰だが、「打開策」となりそうなのが、近隣県への宿泊や民泊の活用だ。
厚生労働省のまとめによると、平成29年度の首都圏のホテル・旅館の客室数は約30万室。ある旅行関係者は、「会場周辺のホテルは非常に高くなるが、神奈川、埼玉、千葉などの宿泊施設はそれほど上がっていない。費用を抑えるには民泊の活用も手だ」とする。
ホテル評論家の滝沢信秋氏も、「まだ予約を開始していない宿泊施設も多いが、カプセルホテルや民泊、一般客の宿泊ができるレジャーホテルなどは狙い目」と指摘。一方で「五輪期間中にどれだけの宿泊施設が供給されるのか、実態把握がされていない。団体や行政が連携して把握に努めるべきだ」としている。