【ウラジオストク時事】安倍晋三首相は5日、ロシア極東ウラジオストクでプーチン大統領と会談した。焦点の北方領土問題を含む平和条約締結交渉について、両首脳は「未来志向で作業する」ことを確認。ただ、6月の前回会談に続いて具体的な進展は見られなかった。
両首脳は11月16、17両日にチリで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際に次回の会談を行い、協議を継続することで一致。条約交渉責任者で5日の会談に同席した河野太郎、ラブロフ両外相に対し、「双方が受け入れられる解決策」を見いだすため作業を進めるよう改めて指示した。
プーチン氏が5日、北方領土の色丹島に開設した水産加工場の稼働を祝福したことに関しては、日本側同行筋は会談で首相が「日本の立場を伝達した」と説明するにとどめた。8月のメドベージェフ首相の択捉島訪問についても、安倍首相は同様に日本側の見解を伝えたとしている。
日ロ双方は6月の首脳合意に基づき北方四島での共同経済活動について調整しており、試験的な観光ツアーを10月に実施。ごみ減容対策では13日から日本側の専門家が現地を訪れる。両首脳はこうした取り組みについて「両国間の信頼醸成に貢献している」との認識で一致し、引き続き進めることを確認した。
一方、プーチン氏は会談冒頭、日ロ関係の現状について「安定的にダイナミックな形で発展している」と評価。両首脳は、トランプ米大統領が前向きなロシアの先進7カ国首脳会議(G7サミット)復帰についても意見を交わした。
また、朝鮮半島の非核化に向けた緊密な連携を確認。イラン情勢も議論した。
両氏による首脳会談は通算27回目。約1時間15分行われ、うち約20分間は通訳だけを介して協議した。
両首脳は昨年11月、1956年の日ソ共同宣言を交渉の基礎とすることで合意。同宣言は平和条約締結後に歯舞群島と色丹島を引き渡すと明記しており、首相は事実上、2島返還に共同経済活動などを加えた「2島プラスアルファ」での決着を視野に入れている。
[時事通信社]