京都アニメーション(京アニ、本社・京都府宇治市)の放火殺人事件で、14日午前に京都市内の病院に転院した青葉真司容疑者について、京都府警は勾留に耐えられるまで回復した段階で逮捕し、本格的な取り調べに入る方針だ。任意の事情聴取で容疑をおおむね認めたとされる青葉容疑者。だが、動機などいまだ不可解な点も多い。捜査関係者は「未解明のまま終わらせるつもりはない」としている。
14日午前9時ごろ、青葉容疑者は4カ月近く入院した大阪府内の病院を出発。ドクターカーに乗り、約1時間20分かけて転院先の京都市内の病院に到着した。約40人の報道陣が見守る中、病院関係者がストレッチャーに乗った青葉容疑者を病棟内に搬送。全身に青い毛布が掛けられるなどした青葉容疑者の表情を確認することはできなかった。
関係者によると、青葉容疑者は大阪の病院で複数回の皮膚移植手術を重ね、8月上旬にはほぼ命に別条がない状態になった。10月上旬までには座った状態でのリハビリを開始。会話も可能で、現在は車いすに座れる程度まで回復している。転院した京都市内の病院でもリハビリが予定されているが、青葉容疑者自身はリハビリに後ろ向きな面もみせているという。
今後の捜査で府警が最大のポイントとしているのが、凄惨(せいさん)な犯行に至った青葉容疑者の動機の解明だ。
捜査関係者によると、青葉容疑者は事件の直前に京アニの本社など関連施設を下見しており、転院前の8日に行われた府警の任意聴取では「一番多くの人が働いている第1スタジオを狙った」と供述。動機については「京アニに小説を盗まれた」と説明したという。
ただ、京アニ側はこれまで、小説などの公募には青葉容疑者と同姓同名の人物から応募があったことは認めているものの、「同一、類似の点はないと確信している」としている。府警は青葉容疑者宅の家宅捜索でタブレット端末などを押収したが、動機や犯行手段につながるものは出てきていないという。
捜査関係者によると、府警はこれまで、遺族や負傷者への聞き取りなどを行い、事件当時のスタジオ内の状況や建物内にいた社員計70人の位置を特定するなど周辺捜査を進めてきた。ただ、負傷者の中には「話したくない」と聴取できていない人もおり、捜査関係者は「話ができるタイミングまで待って、落ち着いた状況で聞ければ」と長期的な視野で捜査を進める。
青葉容疑者の逮捕状の執行には長期の勾留に耐えられるという医師の判断が前提で、身柄を拘束する見通しはまだ立っていない。府警幹部は「青葉容疑者の卑劣な犯行で不幸の底に陥れられた人はたくさんいる。無念を晴らそうと思ったら、しっかり捜査し、確実に裁判にかけるほかはない」と話している。