東京五輪のマラソン・競歩開催 札幌市民の感情は“困惑”から“怒り”へ

今年の札幌は暑かった。象徴的だったのが7月29日から3日連続での熱帯夜。観測が始まった1961年以降では、2日連続以上の熱帯夜は初めて。それどころか、札幌で熱帯夜が記録されたのは、過去59年間でたったの2日しかない。道外の人たちがイメージするほど、ここ数年の札幌の夏は涼しくない。
11月7日、札幌では初雪が観測された。平年より10日遅い冬の訪れだった。この日、みぞれまじりの雪が降る中、東京2020組織委員会の森喜朗会長が北海道入り。秋元克広札幌市長、鈴木直道北海道知事と会談。東京五輪のマラソン、競歩開催への協力を要請した。
「東京五輪のマラソン、競歩が札幌に」――その第一報に多くの道民、札幌市民は驚愕した。
札幌市の中心部・大通公園 iStock.com
札幌ドームでサッカーの予選は開催されるものの、それまでは東京五輪がどこか他人事だった感は否めなかった。
在京の情報番組で「札幌は歓迎ムード」と報道されたが、肌感覚ではそうでもない。
オリンピック開催時期は、北海道観光の一番のかき入れ時。いま、市内の飲食店やホテルは、コース、日程などの行方を固唾をのんで見守っている。「さっぽろ大通ビアガーデン」も、市民にとって夏の楽しみの1つ。例年通り実施されるのか。気を揉んでいる市民は少なくない。
ある夕刊紙でビアガーデンを話題に取り上げており、目にとまった記述があった。
「ジンギスカンの匂いの中をランナーが走るかも」と。
「ジンギスカン=北海道」のイメージだけで書いたと思われる。確かに会場でメニューとしては提供されるが、公園周辺に匂いなどはたちこめていない。春のお花見期間中の「円山公園」なら、うなずける表現なのだが……。
この間、札幌の冬の状況も含めて、東京発信の報道で、こうした誤解を招く表現が少なからずあった。
“困惑”する市民に追い打ちをかけたのが、北海道、札幌を中傷する在京キャスターやSNS上のコメントだった。「東京から奪った」「コースは直線で何もない」「町並みが美しくない」などといったもの。
いま、札幌の市民感情は“困惑”から“怒り”に変わりつつある。
11月15日発売の月刊誌「財界さっぽろ」12月号では、東京五輪のマラソン、競歩の開催問題を約20ページにわたり緊急特集した。

今回、秋元克広札幌市長が受け入れを即断即決した背景には、2030年の冬季オリンピック・パラリンピックの招致が、少なからず影響している。10月上旬、札幌を訪れたJOC幹部の「ここ(札幌ドーム)でマラソンを開催したことはあるんですか?」という“意味深発言”に触れながら、開催決定までを振り返った。全国メディアが報じない、秋元市長と森氏、橋本聖子五輪担当大臣との親密な関係にも言及した。
11月1日のIOC調整委員会終了直後に実施した、橋本大臣への単独インタビュー「“特別な存在”バッハ会長だから移転を決断できた」も掲載。
その上で、札幌の観光スポットを加味した上で、関係者への取材から見えてきたマラソンコースを大胆予想している。
「財界さっぽろ」12月号は、公式ホームページからデジタル版も購入できる。店頭より1日早い11月14日からの発売となる。
(「財界さっぽろ」編集部)