再開、廃業…思いさまざま 福島・伊達の商店街 台風19号で被害

台風19号によって複数の河川が氾濫し、大きな被害が出た福島県伊達市梁川町の中心部の商店街では、複数の店舗が再開に向けて歩き始めた。一方で廃業を検討している店もあり、思いはさまざまだ。再開を目指す店舗からは行政の支援策を求める声が上がっている。【渡部直樹】
阿武隈川水系の塩野川の氾濫などにより浸水した大町地区で畳店を営む池田照成(てるしげ)さん(79)は、年内の営業再開に向けて自宅兼作業場の修理を決めた。「自宅が浸水した人などから新しい畳の注文が入っており、やめるわけにはいかない」と話す。
しかし、畳表を張る機械などが水没して一部が動かなくなった。機械を修理したり、市内で廃業を決めていた別の業者から譲り受けたりして再開を目指すが、時間がかかるという。「冬は寒いし畳がないと落ち着かないと思う。正月明けには畳を届けられるようにしたい」と意気込む。
一方、同地区で100年以上続く酒店「宗川本店」は床上2メートル以上浸水した。10月13日未明、付近の道路に水が来ているのを見てから店が浸水するまでは10分足らずで、店主の武田寅之助さん(72)は「あっという間だった」と振り返る。
近年は注文販売が主で店頭に在庫を置いておらず、商品の被害は免れた。ただ、店舗を梁川町内の小売商店などで構成する町商業事業協同組合の事務所としており、パソコンやプリンターが水没したため、組合の業務ができなくなった。自宅1階も浸水し、現在は2階で暮らしている。顧客が減り、後継者もいないため、廃業も考えているといい、武田さんは「これからどうしていいか分からない」と肩を落とす。
同地区で衣服裁縫修理業を営みながら、まちづくりの会の会長を務める山田清さん(72)によると、地区の中心を走る国道沿いに並ぶ会員の店舗や事業所25軒はほぼすべてが浸水の被害を受けた。再開したのは鮮魚店や美容室など一部にとどまっているという。
周辺は国道の拡幅などに伴って元々、店舗数が減りつつあったという。山田さんは「数少ない残された商店。少しでも再開してほしいし、自分もそうしたい」と話すが、自身の店も床上1・7メートル程度浸水し、平均約40万円するミシンが6台も水没するなど被害が大きい。「再開には時間も費用もかかる。補助金や必要な道具の貸与などが受けられれば」と要望した。