カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致を目指している和歌山県が、整備区域に今後選ばれた場合に限り、建設予定地を約76億円で買い取る合意を地権者と交わしていたことが判明した。IR事業者が県から土地を直接購入できる形を作り、土地価格が流動的になるのを防ぐ狙いがあるという。県は関連する補正予算案を12月の県議会に提出する方針。【黒川晋史】
県は人工島「和歌山マリーナシティ」(和歌山市毛見)にIRの建設を計画。来年には公募で事業者が決まる見込みで、土地は現在、マリーナシティの管理会社が委託する信託会社が所有している。
県によると、民間同士の取引では、事業者ごとの事情によって価格が変動する可能性があり、信用調査の手間もかかることなどが事業者の負担になるため、「公有地にしてほしい」と要望があったという。
こうした事情から、県は建設予定地の購入を検討。マリーナシティの管理会社と合意に達した。金額の適切さは外部の不動産鑑定士らが審査したという。買い取り後は同額でIR事業者に売却し、整備区域に選ばれなかった場合は購入しない。
12月の県議会では支出をあらかじめ決めておく「債務負担行為」として補正予算案が提出される予定だ。議案が可決されれば、県と管理会社が仮契約を結ぶ。その後、さらに県議会の議決を経て本契約に至るという。県の担当者は「他の候補地は公有地が多く、いったん土地を購入するのは必要な手続きだ」と話している。