「防止策、少しでも早く」野田・女児虐待死の検証委報告書 児相の体制不備指摘

救える命だった――。千葉県野田市の栗原心愛(みあ)さん(当時10歳)が死亡した虐待事件を巡り、25日に森田健作知事に提出された県の検証委員会の報告書は、女児についてそう結論付けた。検証委委員長で「子どもの虹情報研修センター」(横浜市)の川崎二三彦センター長は「少しでも早く防止策に着手してほしい」と述べた。県は報告書を県内の児相に配布しホームページでも公開するといい、組織改編や虐待対応マニュアルの抜本的な見直しを進める。【宮本翔平、町野幸、秋丸生帆】
川崎氏は報告書を提出した後の記者会見で、女児の命を守れなかった理由について「児童虐待の基本が十分に周知されていなかった。背景には、通告が増える中で一つ一つを丁寧に対応する体制がなかった点にあると思う」などと指摘した。
女児は2017年11月に一時保護されたが、国の指針で定められた、保護の方向性について話し合う判定会議は一度も開かれなかった。心的外傷後ストレス障害(PTSD)で家族との同居は困難と精神科医が示した診断結果も反映されず、同年12月に一時保護は解除された。川崎氏は「女児を帰すべきではなかった」と批判した。
一時保護決定を児相の指示を受けた野田市が最初に父親に伝えていた点についても問題視し、川崎氏は「児相が連絡すべきで、大変驚いた。市も『それは児相の仕事だ』と断るべきで、児相や市の対応は基本が守られていない」と指摘した。
専門家「職員の専門性向上を」
NPO児童虐待防止協会の津崎哲郎理事長は報告書を読んだ上で柏児相について「専門性もなく体制も不十分で、できて当然なイロハの部分が何もできていない」と批判。家庭裁判所に措置を申し立て家裁が関与する形で行政主導の枠組みをつくるノウハウも足りなかったとする。その上で「県が児童福祉行政の重要性を鑑み抜本的に体制強化を図らなければいけない。研修強化だけでは不十分で、短期間で異動する職員の人事異動の仕組みを変え専門性を高めることが必要だ」と提言した。
栗原心愛さん虐待死事件の経過
<2017年>
7月上旬 女児の母親の親族が沖縄県糸満市に(父勇一郎被告から女児への)どう喝と(母親への)DVを相談
9月1日 女児が糸満市の小学校から野田市内の小学校に転校
11月6日 女児が小学校のいじめアンケートに「お父さんにぼう力を受けています」と記入
11月7日 野田市から連絡を受けた県柏児童相談所が女児の一時保護を開始
12月27日 児相が一時保護を解除し、女児が父方の親族宅に移る
<2018年>
1月15日 市教委が女児が書いたアンケートの写しを父親に渡す
1月18日 女児が野田市内の別の小学校に転校
2月26日 父親が女児に「お父さんにたたかれたというのはうそ」と書かせた紙を児相職員に示し、「家に連れて帰る」と要求
2月28日 児相が「虐待の兆候がない」などと帰宅してもいいと判断
3月19日 児相が小学校で女児と面談。児相職員に紙は父親に書かされたと告白
<2019年>
1月7日 父親から小学校に欠席の連絡
1月24日 女児が遺体で発見される
1月25日 父親を傷害容疑で逮捕。その後、傷害致死罪などで起訴
2月21日 県の検証委員会が初会合
6月26日 傷害ほう助罪に問われた母親に、懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年の判決