男女が結婚をするまでには、いろいろな出会い方や結婚に踏み切るきっかけがあります。
夫婦が別々の人生を歩むことにする「離婚」も同様に、一つとして同じケースなどなく、当事者が離婚を考える事情や、離婚に至る経緯は、それぞれなのです。
結婚して5年ほどで、性格の不一致を理由に夫と離婚したいと考え、私のところへ法律相談にいらっしゃったA子さん(26歳)。
様々な事情をお話され、そのご様子から離婚の意思はすでに固まっているようでした。
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A子さんは、お子さんがおらず、パートはしているものの、その月収は3万円ほどで、基本的に夫の収入で婚姻生活を送っていました。
夫の年収は400万円ほどで、自宅は、夫の名義の賃貸でした。喧嘩が多く家計の相談もできない中で、貯金もできていませんでした。
このような中で、A子さんは、夫と離婚したら、自分が家を出て行くから、引っ越し費用、新居の契約に伴う初期費用、あと慰謝料ももらって、新生活の家電や家具の購入資金にしたいのだということでした。
しかし、離婚に伴う金銭請求として考えられる「財産分与」は、婚姻した後に夫婦が一緒に蓄えた財産を清算するというのが第一義的な目的です。
A子さん夫婦は、貯金はなく、自宅マンションも夫の特有財産であって、夫婦で購入したものではありません。夫婦には他にこれといった財産もなく、財産分与を求めるあてはありませんでした。
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また、慰謝料は、離婚原因について、法的に責任がある場合、例えば、不貞行為等があれば、それをした相手に対し請求できますが、A子さん夫婦のように、性格の不一致が離婚の理由であれば、夫婦のどちらか一方に、より法的責任があるとはいえません。このような場合は、たとえ婚姻生活において嫌な思いをしたといっても、慰謝料は請求できません。
ですから、A子さんには、離婚するにあたって、夫に対し、「清算的財産分与」としても、慰謝料としても、金銭を請求する法的な根拠は特段みあたりませんでした。
しいていえば、これまでの婚姻生活において、扶養を受けていた者が、離婚後自立できるまでのある程度の間、元配偶者から離婚後も一定の金員を支払ってもらうことにする「扶養的財産分与」という考え方を考慮することはできます。
これは、「請求すれば当然もらえる」というほど権利性が確かなものではありません。離婚に至った事情や、相手の経済事情なども総合的に考慮した上で、合意に至ればよいのですが、A子さんのケースでは夫に特に離婚に至る責任があるわけでもなく、夫も財産や収入に余裕はなく、その上、離婚を強く望んでいるのはA子さんの方でした。
ですので、夫からA子さんに対し、金銭を支払うから早く出て行ってくれというような展開も想定できず、実現可能性は低いと思いました。
A子さんは、離婚となれば、妻は夫からある程度の金銭を当然にもらえるべきものと思っていた自分の考えの甘さを認識しました。そこで、当面実家に身を寄せるか、離婚をする時期を見直して、自分の収入がもっと上がるよう検討し、経済的に自立する目処が立ってからにしようと冷静に考えるようになりました。
このように、思い込みや、不正確な知識のもとで、離婚を考えた場合、思わぬ落とし穴がある可能性があります。とくにこの「別れる際には何かしらお金がもらえるものだ」という勘違いをしている方が少なくありませんので、注意が必要です。
また、同様に勘違いしがちなのが、「親権」についてです。その典型例がB男さん(38歳)の例でした。
幼い子どもがいるのに、妻が浮気をしているとして、離婚の相談に見えたB男さん。
子どもを保育園に預け、妻も正社員として就労しており、家計は決めた金額を両名で出し合って、あとはそれぞれが管理し、自由に使えるようにしていました。妻は、シフト制の勤務だったので、シフトの空きを利用して浮気を重ねていたようでした。
B男さんは、仕事や飲み会で帰りが遅くなることもありましたが、妻から文句を言われることもありませんでした。妻の稼ぎのおかげで現在の家計のゆとりがあると思っており、妻の就労を大変頼りにするとともに、シフト制の勤務のおかげで夜は妻が早い時間に自宅に帰っていることはありがたいと思っていました。
休日に子どもと遊ぶのも楽しみだったので、妻の不貞が発覚するまでは、特に結婚生活に不満はありませんでした。
それだけに、妻の不貞は、大変な驚きであり、自分はどうしたら良いのか頭が整理できず、友人や職場の仲の良い同僚に相談しました。すると皆、口をそろえて、不貞行為は離婚理由になるのだから、慰謝料を取って離婚したらどうか、子どもの親権だって、不貞をした妻には認められるはずがないと言いました。
B男さんは、自分が子どもを引き取って、妻から慰謝料をもらって、離婚をするという展開に違和感があり、法律相談を受けることにしたのでした。
友人らが述べたことは、考えられる流れではあります。ただ、親権とは、通常は、子どもを「監護」し、財産管理をし、責任をもって子どもを育てることを言います。親権を取るということは、財産をもらうのとは性質が異なり、子どもにとって面倒をみる親としてどちらがより適格かを考える必要があります。
これまでの子どもの監護は、主に妻が担当してきたB男さん夫婦において、妻が不貞をして夫を裏切ったからといって、そのことが直ちに、子どもの親権者として不適格な事情になるかを考える必要があります。不貞相手と自分の時間を優先するあまり、子どもを放置しているというような場合でしたら、親権者として不適格といえるかもしれません。
しかし、子どもの監護はこれまでと変わりなく行っていたとすれば、夫への裏切り行為は変わりませんが、直ちに親権者として不適格というべきはないかもしれません。
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離婚をする場合、妻に有責性が高いとしても、同時に親権者として不適格になるとは限らず、子どもの問題は、子どものためという視点を忘れてはなりません。
離婚をする際には、「相手が悪い」と思いがち。「だから自分が得をするような結果になるに違いない」と思い込んでしまう人も少なくありません。しかし、法律は常にあなたの味方をするとは限りません。離婚をしたいと考えたら、関係する法律に基づいて、何が最適解かを十分に考えたうえで行動するようにしてください。