口コミ・チラシで集客する「おしゃれ過ぎない」美容院 驚きの立地戦略で売り上げ爆増中

街中に多く見かける美容室。今やその数はコンビニや歯医者の軒数をもしのぐといわれており、厚生労働省発表の「平成30年度衛生行政報告例の概況」によると、2018年度末時点で全国に25万軒以上が営業している。日本フランチャイズチェーン協会が発表している「JFAコンビニエンスストア統計調査月報(2019年3月度)」では、19年3月時点で全国のコンビニは5万5000軒ほど。実際に、美容院はコンビニよりも多く街中に存在している。

店舗数が多くなるにつれ、消費者はどの店に行けばよいか迷うことになる。こうした背景から、リクルートライフスタイルが運営する「ホットペッパービューティー」などの予約サイトが生まれており、今やその影響力は測り知れない。

そんな中、美容室大手のアルテサロンホールディングス(横浜市)のグループ会社であるC&P(横浜市)が運営する美容室「チョキペタ」は、ホットペッパービューティーなど予約サイトに頼らず、口コミやチラシといった集客方法で売り上げを伸ばし続けている。その裏側には一体どのような仕組みがあるのだろうか。C&Pの置塩圭太社長に取材した。

9年間で来店客数80倍、売り上げはおよそ100倍に
チョキペタは11年にスタート。「ヘアメンテナンスサロン」というコンセプトを掲げ、ヘアスタイルをキープすることを目的にした利用を見込んでいる。メニュー構成もシンプルだ。カットとドライが1300円(税込、以下同)、カラーも根元染めが1900円、全体カラーでも2900円とお手頃価格のメニューを取りそろえている。

当初は2店舗のみで、売り上げも1500万円ほどだった。しかし、同社の決算資料によると19年計画として売り上げ規模を14億2000万円ほどと見込んでいる。来店客数も、11年実績で8000人だったところを19年計画では64万人ほどを見込む。

「当時、カットはいらないから白髪染めだけしてほしい、といったニーズに応えるカラー専門店や『QBハウス』さんのように、気軽にカットをしてもらえるような美容室が存在した。チョキペタはその両方のいいとこ取りをし、ワンストップでメンテナンスサービスを受けられる形で始めた」と置塩社長は話す。

ベーカリーやクリーニング店の跡地に出店
チョキペタでは、集客にホットペッパーなどの予約サイトを活用していない。また、チラシもオープン時に使うことはあるが、基本的には「口コミ」に頼っているという。こうしたアナログとも思える手法で売り上げを伸ばし続けているカギは、立地の選び方にある。

チョキペタは、郊外のスーパーマーケットの一角など、「こんなところに美容室が!」と思うような場所に出店を重ねている。担当者によると、前に入っていたテナントはベーカリーやクリーニング店などが多いという。「年齢を重ねてくると、自分の生活圏内で用事を済ませたくなりがち。チョキペタの狙いとする層と、こうした出店の親和性は高い」と置塩社長。

こうした立地に出店することで、日々の買い物の「ついで」に利用されることを狙っている。気合いを入れておしゃれにしても

らいに行くようなデザイン系の美容室であれば、都心や一等地に店を構える必要があり、必然的に競合店も多くなる。そうなると、予約サイトなどに積極的に出稿し、認知度を高める必要も出てくる。それが回りまわってコストになり、サービス価格の上昇にもつながる。

「休眠美容師」の活用も
また、スタイリストには美容師の資格を持っていながら現場で働いていない「休眠美容師」と呼ばれる層を活用。結婚や出産を機にリタイアした人たちの復帰場所としても機能しており、現在スタイリストとして働いている人のおよそ半数ほどが休眠美容師だという。さらに、休眠美容師は主婦層が多いことから柔軟な働き方を推奨し、全体の8割近くがパートとして働いている。

休眠美容師は現場から離れている期間が長い人もおり、スキルに不安を持っている人も少なくないため、オートシャンプーを行う機械を導入するなど、現場の負担軽減にも抜かりがない。

置塩社長は「高齢化という追い風を受けて、メンテナンスサロンという形態は10年後、20年後も『文化』として残っていくはず。まだまだ発展途上だと考えているので、休眠美容師の活用も踏まえて、事業の土台を固めていきたい」と話す。

「おしゃれ過ぎない」ことを強みに売り上げ拡大中のチョキペタ。19年3月にはメニューの値上げを行ったが、直近の数字では来店客数、客単価ともに成長を見せている。今後の推移にも目が離せなさそうだ。