飲食店のテーブルに置かれている紙ナプキンやティッシュ。おしぼりや専用のクロスが用意されている場合もある。
当然、食事中の汚れを拭くためのものであることは言うまでもない。しかし、人によっては鼻をかんだり額の汗をふいたり、その使い方はさまざまである。時には使用済みのものが無造作に散乱し、地獄絵図と化したテーブルを見かけることも少なくない。
それを片付ける店員側の事情や気持ちを考えたことはあるだろうか? 今回は、そのマナーについて店側はどのように感じているのか、どうするべきなのか本音を聞いた。
◆紙ナプキンで鼻をかむ、器に置くのはマナー違反か?
飲食店のテーブルには、紙ナプキンやティッシュが置かれていることがほとんど。使い方は人それぞれだが、店員側はどう感じているのだろうか?
東京都港区のWebコンテンツ制作会社に勤める寺島さん(仮名・27歳)は、「飲食店の紙ナプキンで鼻をかむ」という。たしかに、ラーメン屋などでも鼻をかんでいる人をよく見かけるような気もするが……。
「僕は鼻炎持ちで、何かを食べると必ず鼻水が出ます。原因はよくわかりませんが、食べ物の湯気や香りなどのちょっとした刺激でズルズルと……特に担々麺ですね」(寺島さん)
しかし、問題はその後だ。ゴミ箱が近くに置かれている場合はそのまま投げ捨てればいいだけなのだが……。ゴミ箱がない場合はテーブルの上に放置せざるをえない。そして、何も知らない店員は、鼻水のついたティッシュや紙ナプキンを素手でつかまされることになる。
一方で「食べ終わった器に(食べカスの上から)乗せちゃいますね」と話すのは出版社勤務の小池さん(仮名・41歳)だ。
「残飯も汚れた紙ナプキンも同じゴミ扱いでしょう。そのほうが捨てるときに店員さんもラクなのかなって」(小池さん)
◆店側の本音「ライス皿に入れられるとくっついてしまう」
まずは、サラリーマンの強い味方でもあるラーメン屋から聞いてみたい。「お客様のティッシュの廃棄方法は十人十色」と語るのは、横浜市港南区のラーメン屋『麺場 ちゃっちゃか』の店主・永井丈晴さんだ。
「テーブルにそのままの場合もあれば、ラーメン丼に、ライス皿に、席の後ろのゴミ箱に。ご自身のポケットに入れて持ち帰る人もいます。私自身、慣れもあるかもしれませんが、(使い方や片付け方について)そこまで気にしたことはありません。ただ、しいて言うならばライス皿にティッシュを入れられるとご飯でくっついてしまうので……」(永井さん)
永井さんは「特に困ってはいない」と前置きしたうえで、客の印象をこう話す。
「高そうなスーツをビシッと決めたイケてるサラリーマンがティッシュをそこらへんに散らかし、ラーメンの汁を垂らしたままだとガッカリすることもあります。一方で、イキってるヤンチャな少年が皿をまとめて、ティッシュもゴミ箱へ捨て、タオルでテーブルを拭いて退店したら私は気持ちが良いので、次に来た時にノリ増しなどのサービスをしてあげますね!」(同上)
そこはやはり人間。少しの気遣いでお互いに気持ち良くなれるのだ。
一方で、ライスの皿ではなく、ラーメンの丼に入れればいいのかと言えばそうでもない。以前ラーメン屋で働いていたという牛さん(仮名)が明かす。
「スープの残った丼にティッシュや紙ナプキンを突っ込まれるとイラッとしてました。僕の働いていた店では、ザルみたいなところでスープと麺を濾していたのですが、紙が入っているとすぐにザルが詰まってしまうんです。店内にゴミ箱がある場合はゴミ箱に入れてもらえるとありがたい」(牛さん)
また、ラーメン屋のカウンターの一段上の部分にはグリーンやピンクなどのクロスが置かれていることも多いが……。
「食べている途中で自分の手を拭ったり、飛んだ汁をこまめに拭いたり……それはいいのですが、そのままクロスを我が者顔で独占されると困ってしまう。店員はもちろん、他のお客さんも使うものなので。食べ終わった後に、普通にテーブルの上を拭いてくれれば大丈夫です(一応、店員がもう一回拭きますが)」(同上)
次に、老若男女・幅広い層が訪れるファミレスの場合はどうなのか。都内の某ファミレスチェーン店にアルバイトとして勤務する山本さん(仮名)が話す。
「食事後の皿に紙ナプキンを入れられると……時間が経てば経つほど、料理のソースなどとくっついてしまい、洗っても綺麗に取れないことがあります」(山本さん)
ラーメン屋と同様に、ファミレスでも「皿と紙ナプキンは分けたほうがいい」という。他には、こんな意見も……。
「あとは、紙ナプキンの“無駄使い”が気になります。汚れを拭いたわけでもなく、たんなる暇潰しでいじっただけなのか、大量に紙ナプキンが散乱していることもありますね。特に放課後の学生グループに多いかも……。やっぱり捨てざるをえないのでもったいない」(同上)
普段のなにげない行動が迷惑をかけている可能性も……。また、使用後のティッシュや紙ナプキンを器に入れるなど、たとえ気を利かせたつもりでも裏目に出ていることだってある。店によって片付けのオペレーションは異なり、客側に明確なルールとして決められていることは少ないが、テーブルの上にまとめて置いておくのが無難なのかもしれない。<取材・文/藤井敦年>
【藤井敦年】
Web/雑誌編集者・記者。「men’s egg」編集部を経てフリーランスとして雑誌媒体を中心に活動。その後Webメディア制作会社で修行、現在に至る。主に若者文化、キャバ嬢、地下アイドル、社会の本音、サブカルチャー、エンタメ全般を取材。趣味は海外旅行とカメラとサウナ。Twitter:@FujiiAtsutoshi