弁護側は即日控訴 妻子3人殺害の元福岡県警警察官に死刑判決

福岡県小郡(おごおり)市の自宅で2017年、妻子3人を殺害したとして殺人罪に問われた元福岡県警巡査部長、中田充(みつる)被告(41)=起訴後に懲戒免職=に対し、福岡地裁の裁判員裁判は13日、求刑通り死刑判決を言い渡した。柴田寿宏(としひろ)裁判長は「家族3人を殺害したという結果は重大。とりわけ子供たちを殺害したことに酌量の余地はなく、犯行態様が非常に悪質」と非難した。弁護側は即日控訴した。
公判で中田被告は「一切身に覚えがなく事実無根」と無罪を主張。目撃証言など直接証拠がない中、被告が犯人かどうかが最大の争点だったが、判決は複数の状況証拠から被告を3人殺害の犯人と認定した。
判決によると、中田被告は17年6月5日深夜から遅くとも6日午前6時半、自宅で妻由紀子さん(当時38歳)の首を何らかの方法で圧迫、長男で小学4年の涼介さん(同9歳)と長女で小学1年の実優(みゆ)さん(同6歳)の首をひも状のもので絞め、それぞれ殺害した。
柴田裁判長は判決理由で、仮に第三者の犯行だとすると、この時間に自宅にいた被告に「気付かれることなく3人を殺害したとは考えられない」とし、周辺の防犯カメラ映像や自宅の指紋状況などからも第三者侵入の可能性を排除した。
その上で、被告の左腕に妻が抵抗した際に付いたとみられる傷があり、妻の右手薬指の爪の間から採取した微物が被告のDNA型と矛盾しないことなどは、妻を殺害した犯人と裏付けるものだと指摘。動機は「不明」としつつも、被告が妻から日常的に叱責されるなどしていたことを踏まえ「何らかのきっかけでこれまでの鬱憤を爆発させ、衝動的に犯行に及んだとみるのが自然」と述べた。
さらに地裁は、妻が日ごろから熱心に子育てに取り組み、事件以降の子供の予定も入れていることなどから、妻が子供2人を殺害した可能性も否定。「妻を殺害した被告が冷静さを欠いた心理状態のまま衝動的に子供たちを殺害したという想定は可能」と判断した。
また、3人の遺体をつなぐようにライターオイルをまいて火をつけた痕跡があることについて「証拠隠滅を図ろうとしたと推測できる」と指摘。「現職警察官が妻子3人を殺害したという衝撃的な事件で社会的影響も軽視できない」と指弾し、「計画性は認められないとはいえ、死刑の選択は免れない」と結論づけた。
3人の遺族は「判決は、私たちの意見と異なることはありません。今はただ、由紀子、涼介、実優の思い出と共に静かに過ごしたいと願っております」とコメントした。【宗岡敬介】