秋サケ、記録的不漁 岩手沿岸、漁獲量前年比18% 海水温高く戻ってこない?

岩手県内の秋サケ漁が記録的な不漁に苦しんでいる。11月末までの漁獲量は、昨年の同じ時期と比べて2割程度しかない。漁獲量は年々減少傾向にあるが、今年は特に落ち込みが目立つ。海洋環境の変化による海水温の上昇などが要因とみられ、今後も厳しい状況が続きそうだ。
県内の秋サケ漁は、主に9月から翌年1月末まで続く。県漁獲速報によると、11月末時点の漁獲量は1090トンで、前年同期比の18・7%だった。魚市場別では、久慈が284トン(前年同期比26・9%)、宮古94トン(同11%)、釜石26トン(同8・1%)、大槌6トン(4・5%)で、沿岸南部が特に深刻な状況だ。1996年度に7万3526トンの漁獲量を誇ったが、その後は減少傾向が続く。2017年度は7289トンと、10分の1にまで減った。
なぜ秋サケ漁の漁獲量は減っているのか。県によると、一因に海水温の変化が考えられる。サケは生まれてから3~5年後に、放流された川に戻る。人の手によって採卵・授精された後、ふ化場で育つ。春、稚魚は放流されるが、体が小さいため、1カ月ほど沿岸近くでプランクトンを食べ、体力をつけてから北上する。
サケは水温5~13度くらいが生息に適しているが、近年、沿岸の海水温は上昇。耐えられずに体力がないまま北上し、稚魚が生き残れる確率を下げている可能性がある。
また、秋から冬にかけても沿岸の海水温が高いままで、成長したサケが戻って来づらい状況という。県水産技術センターの太田克彦漁業資源部長は「直接的な原因はつかめていないが、放流時や川に戻る時の水温が高めに動いていることが、サケの生き残りや成長に悪い影響を与えているのではと考えられる」と語る。東日本大震災で採卵やふ化のための施設が被災した影響で、その後、毎年の放流数自体が減っていることも関係しているとみられる。

同センターは、稚魚の泳ぐ力を強化しようと、餌を改良したり、比較的温かい水温の時期に戻って来たサケを調べるなど、対策に取り組んでいる。ただ、効果が分かるまでには年月を要する。「サケの研究は進むのが遅いのがネック。急激に好転する要素は見当たらない」と話す。【藤井朋子】
1匹7000円 昨年の2倍
宮古市魚菜市場(同市五月町)の鮮魚店「後藤商店」に13日並んだサケの価格は、1匹7000円前後が多かった。従業員の鈴木雄二さん(39)が「大きくて立派、値段も立派だっけ」と声を掛けると、買い物客らは足を止めて品定めをしていた。
1匹購入した市内の女性(76)は「正月に向けて新巻きサケを作る。昔はまとめて買って、お歳暮に1匹ずつ配っていた。最近は不漁で高いから、切り身にして送る」と話す。鈴木さんは「今年は全体量が少ないため、単価が高くなる。昨年と比べても、値段は1・5倍から2倍ぐらいになっている」と話す。【藤井朋子】
観光にも影響 つかみどり中止
秋サケ不漁は観光イベントにも影を落としている。
大槌町は今月8日、同町末広町のおしゃっちで開いた「おおつち鮭(さけ)まつり 大槌の味覚大作戦」で、目玉イベントだったサケのつかみ取りを中止した。昨年は100匹を用意したが、今年はつかみ取りができるほどの数が確保できなかった。町観光交流協会は「残念だが、仕方なかった」と話す。サケ汁の振る舞いも取りやめ、地元の野菜や海産物を中心にサケも入れた海賊鍋に切り替えた。
同じくサケのつかみ取りを売りにしていた22日の「第48回元祖宮古鮭まつり」(宮古市津軽石)も中止となり、三陸鉄道宮古駅前広場に場所を変更して「みやこの鮭大漁祈願祭」を開く。宮古観光文化交流協会の山口惣一事務局長は「サケの卵を確保し、資源回復を優先した」と無念さをにじませた。【滝沢修】