今年中国企業で最も目立った「アリババ」 その1年を振り返る

BATと呼ばれる中国IT企業――バイドゥ(百度)、アリババ(阿里巴巴)、テンセント(騰訊)の存在が、米国のGAFA同様、世界のIT業界を俯瞰する上で無視できない存在になっている。この記事ではそんなBATの中から、2019年最も目立ったアリババについて紹介したい。

創業20周年となる今年、アリババは話題に事欠かなかった。一番の衝撃は、アリババの顔であり、中国ネット産業を率いていたジャック・マー(馬雲)氏が9月にトップを引退し、ダニエル・チャン(張勇)氏にバトンタッチしたこと。今後の成長に向けて打ち出した、「102年続く優れた企業になることを追求する」という価値観(コアバリュー)も話題を呼び、12年に自主的に上場を廃止した香港証券取引所へ“再上場”したことでも注目を集めた。

そんなアリババだが、そもそもどんな企業なのだろうか。まずは同社が展開しているサービスとその動向について振り返ってみよう。

アリババとは?
アリババは、1999年にジャック・マー氏が設立。B2BのECサイト「Alibaba.com(アリババドットコム)」や「淘宝網(タオバオ)」で急成長し、現在はB2CのECサイト「天猫(Tmall)」や、クラウドサービス「阿里雲(アリクラウド)」、動画サービスの「優酷(Youku)」など、幅広いサービスを展開。その多くが動物の名前を冠していることから、「阿里動物園」といわれることもある。

キャッシュレス決済の「支付宝(アリペイ)」も、もともとはアリババのサービスだったが、現在は関連の金融会社・アントフィナンシャルが提供している。

サービス以外では、コネクテッドカーなどIoT製品に対応したOS「AliOS」を提供している他、18年9月に設立した傘下企業「平頭哥半導体(T-HEAD)」が、高性能なAIチップ「含光800」や、組み込み用CPU「玄鉄910」、SoC用プラットフォーム「無剣」などを発表。含光800は、アリババのスマートシティ向けソリューション「都市大脳」への導入も進んでおり、処理能力が大幅に向上しているという。

EC市場の注目は「ライブコマース」
大手IT企業として幅広いサービスを手掛けるアリババだが、主力事業はやはりECだ。アリババドットコムや淘宝網だけでなく、中古販売の「閑魚(Xianyu)」、共同購入サービスの「聚劃算(juhuasuan)」など、複数のECサイトを運営しており、スマートスピーカー「天猫精霊」でもEC機能を強化している。

中でも今年注目を集めたのは、ライブコマース「淘宝直播(タオバオライブ)」の台頭と、網易(ネットイース)の越境EC「Kaola(考拉/コアラ)」の買収だろう。

近年、中国ではライブコマースが大きな盛り上がりを見せており、「TikTok」を提供するバイトダンスが中国向けに提供している「抖音(ドウイン)」や、中国版Instagramともいわれる「快手(Kwai)」は、ショート動画とライブコマースの連携を推進。これに対抗し、アリババも「淘宝直播(タオバオライブ)」でライブコマースに注力している。

中国では、「双十一(ダブルイレブン)」――いわゆる「独身の日」である11月11日と、大手EC「京東(ジンドン、JD)」の記念日である6月18日に大規模な“EC祭り”が起きるのだが、今年はどちらの祭りでも淘宝直播(タオバオライブ)が台風の目になっていた。

その背景には、EC市場における競合の台頭がある。これまでアリババの競合といえば京東だったが、19年は京東と新興EC「ピンドゥオドゥオ(※)」の間で熾烈な2位争いが起きた。ピンドゥオドゥオは価格が安い反面、偽物も混ざることで知られるECサイトだ。淘宝網で偽物販売が減っていく中、その下の市場で支持を得て、のし上がっているサービスである。

(※)表記は「(てへんに併のつくり)多多」
前述の2大EC祭では今年、アリババ、京東、ピンドゥオドゥオの3社による競争が激化。毎年EC祭には何かしらの仕掛けや変化があり、消費者も新しい取り組みに期待しているのだが、今年は3社による割引券のばらまきやライブコマースの販売合戦が盛り上がりを見せた。

また、BATは企業買収による拡大が目立つが、今年は控えめだった。そんな中注目を集めたのが、アリババによる「Kaola(コアラ)」の買収だ。

Kaolaは大手ネット企業「網易(ネットイース)」のサービス。越境ECではアリババの「天猫国際」よりも優位にいたが、アリババが9月に20億ドルで買収。ブランド名は「コアラ」のまま、アリババ傘下となった。これにより、アリババは越境ECのシェアで半数以上を占めるようになっている。

話題のニューリテールには暗雲も・・・
一方、同じECでも「ニューリテール(新零售)」では、良い話題よりも悪い話題の方が多かった。ニューリテールは、オンラインとオフラインを融合することで購買から配送までの業務を効率化しようとする取り組み。同社のネットスーパー「盒馬鮮生(フーマー)」が火付け役となり、中国の大手企業も対抗サービスを展開しつつある。

しかし、ニューリテールの実現には同じ都市内に多数の店舗を展開し、配送網を構築する必要がある。盒馬鮮生こそ中国全土の都市へ展開を進めているが、こうした次世代型のネットスーパーを実現できているのは北京、上海、深セン程度で、それ以外の都市ではまだまだだ。

アリババでは小型店舗「盒馬mini」、ビジネス街向けの「盒馬F2」、コンビニ的な「盒馬小站」、老舗スーパー「盒小馬」といった、盒馬鮮生に続く新しいニューリテールの販売形態を模索しているが、定着には至らず、一部店舗は業績不振で閉鎖している。前途多難といえそうだ。

最後にアリババグループ全体の決算から、同社の1年を振り返ってみよう。

アリババグループの2019年1~3月期(2019年第4四半期)の売上高は、前年同期比51%増の934億9800万元(約1兆5900億円)。営業利益は同5%減の87億6500万元(約1490億円)と増収減益だった。

続く4~6月期(2020年第1四半期)の売上高は、前年同期比42%増の1149億2400万元(約1兆8387億円)で、営業利益は同204%増の243億7500万元(約3900億円)。

7~9月期(2020年第2四半期)の売上高は、前年同期比40%増の1190億1700万元(約1兆9042億円)。営業利益は、前年比51%増の203億6400万元(約3258億2400万円)と、2期連続で増収増益だった。

中国小売市場におけるアリババの月間モバイルアクティブユーザー数は、7億8500万人(2019年9月末時点)と、6月末から3000万人増加している。また、中国小売市場における年間アクティブコンシューマー数は6億9300万人。2019年6月末時点から1900万人増加した。巨大IT企業の1つとして、今後も目が離せない。