ロシアとフィリピンの戦没者遺骨収集事業で、政府の収集団が日本人以外の可能性がある骨を持ち帰っていた問題で、弁護士らによる調査チームが23日、検証報告書を公表した。14年前から計17回にわたって取り違えの疑いを指摘されながら、厚生労働省が事実上放置してきた要因は、職員間の引き継ぎの欠如などにあるとし、「組織として問題意識が低い」と厳しく指摘した。
同省のこれまでの調査で、ロシア・シベリアの597柱と、フィリピンの10柱について取り違えの疑いが判明している。調査チームは、過去の非公開会議の議事録などを調べ、幹部ら33人への聞き取りも行った。
報告書では、シベリアについて2005年以降、計15回にわたり、複数の専門家から「日本人特有のDNA配列に見えない」などの意見が出されたが、同省では昨年9月まで対応にあたらなかったと認定した。
この背景について報告書は、シベリアではロシア側から提供された日本人抑留者名簿に基づいて遺骨が収集されたことなどから、同省担当者らに「日本人以外の可能性は低い」との共通認識があったと指摘。遺族の高齢化に伴い、当時は収集を急ぐことが最大の課題で、指摘の重要性が理解されなかったと分析した。
一方、フィリピンの収集分については、2011年6月と10月、DNA鑑定の専門家が「絶対に10柱は日本人ではない」と断言し、強く公表を求めた。だが当時の担当部署は「一つの判定結果であり、最終的な判断ではない」として公表も検討も見送っており、この点について報告書は「国民への説明責任に問題があった」と結論づけた。
同省は、担当者の処分や再発防止策を検討する。