夜の古刹で拳を交え… 元ボクサー住職が育てる女子中学生チャンピオン

福岡県豊前市の山あいにたたずむ真宗大谷派・来迎寺(らいこうじ)。約400年の歴史がある寺院の納骨堂の白い壁に、大小二つの影が揺れる。一方が17代目住職で子供たちにボクシングを教える矢鳴千之(やなるちゆき)さん(42)、もう一方がその教え子で、ボクシング「ジュニアチャンピオンズリーグ全国大会」U15女子40キロ級認定チャンピオンの渕上佳奈恵さん(12)=豊前市立八屋中1年=だ。2人は26日に迫った渕上さんの試合に向け、夜の古刹(こさつ)で汗を流す。
矢鳴さんは、アマチュア時代に国体3位、プロでメインイベンターだった元ボクサー。
大分県中津市のJ中津ボクシングジムに所属する渕上さんは小学3年の頃、矢鳴さんの主宰する子供向け教室を見学した。普通なら大人に怒られる、人にパンチを当てる行為をあえて練習することに面白さを感じてボクシングにはまった。
矢鳴さんによると、渕上さんの特長はフットワークとテンポの良さにあり「何よりも楽しそうに練習する点が素晴らしい」と評価。試合の近い渕上さんのため、教室がない日やジムへ行けない日など週1、2回、寺で特別に個別指導する。
現在3連勝中の渕上さんは「練習してきたことが試合でできたら楽しい」。26日の試合は東京・墨田区総合体育館であり、別の大会で全国王者になった選手との「統一戦」だ。「圧倒的な内容で勝ちたい」。女子中学生チャンピオンの目が輝きを増す。【津島史人】