外回りの多いビジネスパーソンのネックといえば、外出先での仕事のしにくさだろう。最近はカフェやファミレスで作業する人も増えてきたが、ノートPC1つではなかなか仕事が進まないことも多く、画面が見づらいのか背中を丸めて作業している人や、打ち合わせ相手に画面を見せようと何度も立ち上がる人をよく見かける。「オフィス以外でももっと効率的に作業ができたら……」と思っている人も多いのではないだろうか。
そんなビジネスパーソンにおすすめしたいのが、携帯できる外付けディスプレイだ。これを持ち歩くだけで、外出先での作業効率が格段にアップする。
外付けディスプレイというと、デスクの上で存在感を放つ重厚感のあるものを思い浮かべる人も多いが、最近はモバイルタイプのサブディスプレイを販売するところも増えてきた。また、会社支給のPCに接続する端末や業務に使える機器を制限している会社であっても、記憶領域のないディスプレイであれば、情報流出や接続機器を介したウイルス感染といったリスクがなく、情報システム部門などからも許可を得やすいだろう。
では、どのように外出先での作業効率を上げてくれるのか。筆者が愛用している、ユニーク(千葉県柏市)の「Prometheus Monitor(プロメテウスモニター)」を使って、具体的な利用シーンを紹介していこう。
(※)記事中で紹介している製品情報などは、全て執筆当時(12月20日時点)のものです
クライアントとの打ち合わせやプレゼンに
打ち合わせで外に出ると、カフェなどでクライアントと向かい合わせに座ることも多いだろう。しかし、画面がノートPCしかないと、「ちょっと失礼します」とわざわざ隣に移動したり、狭い机で何度もPCの向きを変えたりしなければならない。
それに、自分のPCを相手に見せるとなると、Skypeやハングアウト、Slackなどの通知に悩まされることも多い。オフィスにいると便利だが、商談中に頻繁に通知が来ると「進捗はどうなっているのか」「クライアントに見られていないか」などと考えてしまい、気が気でない。こんな悩みを、モバイルディスプレイは解消できるのだ。
クライアントに見せたい画面があったら、ノートPCにディスプレイを接続し、ミラーリング設定をして相手に向けるだけでいい。ミラーリングは、ノートPCディスプレイを複製するようなもの。モバイルディスプレイに自分が見ているのと同じ画面を表示して、相手に見せながら説明できるようになる。マウスカーソルの動きも表示されるので、今どこを指しているのかも一目瞭然だ。
気になる「通知」も、ディスプレイの設定を変更するだけでOKだ。OSがWindows 10ならミラーリング中の通知は非表示がデフォルトになっており、Macでも[おやすみモード]をオンにすれば通知が非表示になる。これなら、プレゼンや打ち合わせのたびにチャットツールの設定を変えたり戻したりしなくてすむ。
隙間時間でも効率よく作業しよう
客先と客先の合間など、隙間時間に仕事をしたいと思う人も多いだろう。しかし、ノートPCで複数のウィンドウを開いて作業しようとしても、表示できる量に限りがあり、ぱっと見ただけで情報を把握するのは難しい。そうした窮屈さがストレスになり、作業効率が悪くなる――なんてことも多いのではないだろうか。
こんな時にも、モバイルディスプレイが活躍する。参照したい資料はディスプレイに表示しておき、ノートPCでは作業に必要なウィンドウだけを開いておけばいい。入力中のアクティブウィンドウをわざわざ移動させなくても、WebブラウザやWord文書、フォトビューアーなどをぱっと確認できる。
[Alt]キー+[Tab]キーやマウスクリックで忙しくウィンドウ切り替えすることに比べれば、格段に作業効率はアップする。個人的には、持ち歩く前と比べると少なくとも1.5倍に上がったと感じている。
また、タッチ操作に対応したモバイルディスプレイならさらに作業を効率化できる。
WordやPowerPointなどのMicrosoft Office製品には、文書内に直接手書きで文字や図形を書き込める「インク」ツールがあり、非常に便利なのだが、タッチ対応のPCでなければ使うことができない。しかし、タッチ対応のモバイルディスプレイをつなげば、そちらでインクツールを使えるようになる。
マルチタッチ対応であれば、スマートフォンやタブレットのようにピンチアウト・ピンチインで画面を操作することも可能だ。見づらい資料を拡大したり、細かい書き込みをしたりするのにも使える。限られたスペースでキーボードやマウスを使うより、ぐっと作業しやすくなるのではないだろうか。
購入時に押さえておきたい5つのポイント
モバイルディスプレイは量販店や通販サイトでさまざまな機種が発売されている。どんなものを選ぶべきか迷ったら、これから上げる5つのポイントを押さえてみてほしい。
・手軽さ: 映像信号も電源供給もケーブル1本でできるUSB Type-Cポート(Alternate Mode規格のもの)を搭載したものが望ましい。作業を始める時も終える時も、1本のケーブルを抜き差しするだけで済むため、時短につながる。
・拡張性: 会社支給のPCと接続することを考えると、HDMI(またはミニHDMI)ポートも搭載していることが望ましいだろう。映像信号まで出力できるUSB Type-Cポートが会社支給のPCに搭載されているとは限らないからだ。
・タッチ操作対応: 外で仕事をする機会が多いなら、多少初期投資はかさむが、活用の幅が広がるマルチタッチ対応のものを選ぶのがおすすめだ。「大画面に表示できるだけ」のモバイルディスプレイではもったいない。
・携帯のしやすさ: スリムで軽いものでなければ、持ち歩くのが面倒になる。持ち運びやすい大きさ、重さのものを探そう。ディスプレイを保護するカバーや、スタンドと兼用のカバーが同梱されているものを選べば「どうやって鞄に入れておこう?」と悩まずに済む。
・解像度の高さ: せっかく作業領域を広げるのであれば、表示できる情報量は多い方がいいだろう。解像度はフルHDと呼ばれる1920×1080ドット以上のものを選びたい。とはいえ、解像度が高すぎると今度は「文字が小さすぎて見えない……」といった問題が出てくることもある。自分のしたい作業に合わせて、見やすいものを選ぼう。
ちなみに、この記事で使用した「Prometheus Monitor(プロメテウス モニター)」は、15.6型フルHDのモバイルディスプレイだ。クラウドファンディングサイト「Makuake」で購入したが、現在はAmazonや楽天、ヨドバシカメラなどでも購入できる。
大きさは356(幅)×212(高さ)×9.7(奥行き)ミリで、最薄部は4.3ミリと、大画面の割にスリムでコンパクトだ。重さは約0.6キロ、付属のカーボン製カバーをつけても約1キロなので、持ち歩くのが苦にならない。
接続端子はminiHDMI、USB Type-C×2、3.5ミリヘッドホンジャックの3つ。USB Type-Cポート非搭載のPCでもUSB Type-Aポートがあれば、付属のケーブルを使ってプロメテウス モニター側のUSB Type-Cポートと接続でき、タッチ操作やプロメテウス モニターへの電力供給が可能になる。マルチタッチ操作にも対応している。
もちろん、プロメテウス モニター以外にも、バッテリーを搭載しているものやワイヤレス接続できるものなど、さまざまな製品が販売されている。まずはASUSやアイ・オー・データ機器といったメーカーを調べたり、クラウドファンディングサイトを検索したりして、自分に合う製品を探してみよう。決して安い買い物ではないが、自分に合ったデバイスを1つ加えるだけで、「外に出ると仕事がしにくい」というストレスから解放されるかもしれない。