いよいよ東京五輪まで6日で200日となった。3月にアテネから到着する聖火は、4か月かけて全国を回り、東京に到着する。スポーツ報知では、五輪・パラリンピックを巡る様々な話題を取り上げる「東京五輪 社会学」を掲載します。初回は小池百合子都知事(67)に、開催都市のリーダーとして懸念される様々な課題にどう取り組むのかを聞いた。(聞き手・奥津 友希乃)
昨年の「一」から 東京でも8試合が行われた昨秋のラグビーW杯日本大会。小池氏は、日本代表の活躍とともに全体が一つになっていく姿に感銘を受けた。同時に、2020年のイメージも湧いてきたという。
「19年はラグビーW杯で盛り上がり、流行語大賞には『ONE TEAM』が選ばれました。昨年の一文字は『一』と申し上げてきましたが、今年は『一』から『五』に変えていきたい」
今年の一字に挙げた「五」は、五輪の意だと思いきや、それだけではない。小池氏は、「五」に込めたさまざまな思いを、ジョークを交えながら語った。
「『五』というのは、パラリンピックもありますが、五輪という意味と、五輪・パラ合わせて55競技。メダルの数が全部で5000個。金・銀・銅のメダルは皆さんのご協力で、古い携帯電話の部品を活用して作り、国際的なメッセージにもなっています。(通信は)今は4Gですが、これから5G(第5世代移動通信)が普及していきます。これら全てをひっくるめて『五』が今年の一字になると思います。そして、五輪・パラリンピック後も元気な東京であるという意味を込めて『ゴー・ゴー』と(笑い)」
五輪を誘致した猪瀬直樹元知事、後を継いだ舛添要一前知事は、いずれも政治資金問題などにより、任期途中で辞職。16年7月の都知事選で当選した小池氏は、就任直後から大会コストを見直し、成果も上げた。ただ昨年10月、国際オリンピック委員会(IOC)が猛暑を避けるため、五輪のマラソン・競歩会場を東京から札幌へ変更することを突如発表。小池氏は“合意なき決定”と反発したものの、11月に移転が正式決定した。
「残念ながら、札幌移転という思わぬIOCの決定がありました。しかし、会場も多岐にわたっていますし、全体で成功するための準備を進めています。予定されていたマラソンのルートはパラリンピアンが走ります。パラリンピックの成功があって大会は成功と言えます。その準備も怠りなくやっていきます」
暑さ対策手応え マラソン・競歩の札幌移転決定後にも、大会組織委員会がトライアスロンや馬術の競技開始時間の前倒しを発表するなど、暑さ対策は終わりが見えない。それでも国政では、05年から環境相として「クールビズ」を推進してきた経験を持つ小池氏は、都が進めてきた対策の手応えを語る。
「暑さ対策はIOCからもお墨付きをもらうくらい準備は重ねてきました。ネッククーラーの用意や、水分補給地点の確保、(一部道路の)遮熱性舗装や街路樹を刈り込まずに陰を作りました。また、医師会と連携してD―MAT(災害派遣医療チーム)なども整えているところです。(話題になったかぶる傘は?)私も農業体験の時にかぶって作業をしましたが、手が空くことが一番のポイントですね」
およそ半世紀ぶりに東京で開催される平和の祭典への期待が高まる一方で、多くのエコノミストは、大会後の景気悪化を懸念するリポートを出している。東京は、世界の都市間競争が激化する中、大会後を見据えた取り組みも進めている。
「ブレグジット(英国のEU離脱)、香港情勢、米中関係、北朝鮮情勢など非常に不安定で、今後も激変が考えられます。そういった中で、経済をもり立てていかなければなりません。五輪・パラリンピックは一つの引き金であり、未来への投資でもあります。五輪後の東京が経済も、それぞれの地域や一人一人の生活も向上するように、予算を組んでいるところです。また、今後は少子高齢化が加速度的に進みます。長寿という言葉を『CHOJU』と国際語にしていきたい。東京で安心して年齢を重ねられるような社会作りをしたいですね」
◆再選より予算
小池氏は昨年末、10年以上先の東京の未来を見据えた「『未来の東京』戦略ビジョン」を披露したが、7月の都知事選への態度は明確にしていない。6月の都議会で、との見方もあるが、小池氏が好む「サプライズ」で態度表明する可能性もある。「今は五輪・パラの準備や、令和2年度の予算案編成に取り組んでいます。予算規模は14兆円近くに上り、スウェーデン(の国家予算)に匹敵します。それを前へ進めるということが、いま集中すべきことだと考えています」