六本木の新・行列グルメは「メルセデスベンツと“日本一”立ち食いそば屋の異色すぎるコラボ」

あの菊地剛志さんからメールが届いた。
2019年2月に突然幕を下ろした、虎ノ門にあった伝説の立ち食いそば屋「港屋」の創業者である。メールには下記のように綴ってあった。
<このたびメルセデス・ベンツ日本は、日本一行列のできる伝説の立ち食いそば屋「港屋」と共に、12月26日より、ブランド情報発信拠点、東京・六本木のMercedes me Tokyo NEXTDOORに、「Minatoya 3」をオープンいたします。
より多くのお客様に「Minatoya 3」を通じて素敵な体験を提供いたします。>
「港屋」が幕を下ろした今、菊地さんが厨房に立つ事は無くなった。唯一、大手町の「星のや東京」にある「港屋2」でのみ、あの「冷たい肉そば」を食べることができる。
そして、今度はメルセデス・ベンツ日本との新たな展開というわけである。早速、オープンとなった12月26日に「Minatoya 3」を訪ねることにした。
Mercedes me Tokyoは外苑東通りを六本木からミッドタウンを右手にし、乃木坂・青山方向へ歩いて行った左側の一等地に佇む。黒く芸術的なフォルムなのですぐにわかる。高級車メルセデス・ベンツが建物の内外にゆったりと並んでいる。カフェやレストランがある情報発信拠点となっており、メルセデス・ファンのみならず様々な人々が気軽に訪問できる場所になっている。

そのMercedes me Tokyoの右隣りにあるMercedes me Tokyo NEXTDOORで「Minatoya 3」の幕が上がった。
初日の13時半過ぎだというのに、すでに情報をキャッチしたツワモノ達が店内に陣取っている。30人は余裕で入店できる広さだ。店先には菊地剛志さんの姿もみえる。お元気そうでなによりである。
「Minatoya 3」のそばはどんな味なのか。あの「港屋」の味を打ち出してくるのだろうか。菊地剛志さんと挨拶し、ワクワクしながら店に入ってみることにした。すると入口のすぐ左手に「Minatoya 3」のロゴと共に1枚の写真が掲げられていた。“Mercedes-AMG GT”である。
入店時は何気なく通り過ぎてしまったが、実は、この写真に「Minatoya 3」の神髄ともいうべきコンセプトが、秘められていたのである。
まず、カウンターで注文をするのだが、そのメニュー名がまたカッコいい。
Minatoya 3 Vision “ Mercedes-AMG GT Atatakai-Nikusoba ”その1つのみである。
テーブルに案内されて待っていると菊地剛志さんとメルセデス・ベンツ日本株式会社のマネージャー引頭秀明さんが立ち寄ってくださったので、いくつか質問をしてみることにした。
――メルセデス・ベンツ日本はなぜ菊地剛志さんとタッグを組むことになったのですか?

引頭 もともとは代表取締役社長の上野が虎ノ門の「港屋」の大ファンであったこともありますが、私どもも含め、菊地さんの妥協を許さないそば作りと、唯一無二の存在である「港屋」を作り上げた姿勢に感銘したということがあります。
メルセデス・ベンツ日本でも「最善か無か(The best or nothing)」というスローガンを掲げています。そうした最先端を作り上げていく方と共演することに意義があると感じた訳です。
――菊地さんはメルセデス・ベンツ日本からのアプローチにどう反応したのでしょうか?
菊地 <高級自動車文化の創り手として、メルセデス・ベンツ程成功したブランドは無い。2019年メルセデス・ベンツ日本と港屋は、夢を重ねた。そこには互いの道理がある。メルセデス の美眼が社会に与える影響は大きい。皆、唖然とするか模倣するかといったところが常だろう。“時代を先取りする”ということは、“メルセデス”という事であり、メルセデスの描く未来は、まるで宝石の様にきらめきだす。と、私は思う。> この様に公式コメントにしたためました通り、「夢を重ねた」という事です。日本の新しい文化の扉を一緒に開いていかなければならないと、私は思っております。
――メルセデス・ベンツ日本が「Minatoya 3」に期待することはなんでしょうか?
引頭 メルセデス・ベンツは「高級で遠い存在」となることは望んでいません。お気軽にこのショールームにいらしていただいて、「Minatoya 3」でクルマを眺めながらのお食事と楽しいひと時をすごしていただくことも、Friendlyな存在になるためには必要だと考えています。

お店の入口には次のようなメッセージが綴られていた。
Dear “Mercedes & Minatoya 3”Friends !!
Thank you for coming Today
We’re by your side…
――菊地さんはメルセデス・ベンツ日本と共にどのように「Minatoya 3」のコンセプトを創造して行ったのですか?
菊地 みなさまは、「港屋」や「港屋2」の「冷たい肉そば」を想像されていらしたと思いますが、実は違います。入口の“Mercedes-AMG GT”の写真をご覧になられましたか。
私は“Mercedes-AMG GT”の世界観を、そばを通して表現致しました。どうぞお召し上がりください。
ちょうど菊地さんがお話したタイミングで、Minatoya 3 Vision “ Mercedes-AMG GT Atatakai-Nikusoba ”が登場した。そしてそのフォルムをみてハッとした。美味しそうな独特の香りを放つ、あの「港屋」のつゆに、あらく切られたたっぷりのネギと、たっぷりの豚バラ肉、ラー油と胡椒と花椒がかけられた汁椀に、生玉子、そば湯用の猪口。そして美しく刻まれた海苔が盛られたそばの麺。その麺の色彩が、実に綺麗なイエローだったのである。
促されるように、まずその綺麗なイエローの麺を何もつけずに食べてみた。「港屋」の麺より軽やかでごわっとした食感もなく、やや塩味も感じられる。加水は少な目でコシを十分に引き出している。この麺にはそば粉、そして卵黄をも使用しているという。菊地さんが「Minatoya 3」の為に新設計した。色彩はイエローだが確かにそばの味を感じる麺だ。その配合や創り方はすべて非公開だそうだ。これは間違いなく人気が出るであろう綺麗で旨い麺である。

つけ汁は、以前より返しはマイルドになったように感じられる。ラー油も適度な辛さである。そして、玉子を入れて麺をからめて食べると、綺麗なイエローの麺が一層引き立つ。そして胡椒と花椒が実にいい仕事をしている。食べ終わった後味がすこぶるさわやかなのである。
また、そば湯は猪口に、自らそば粉を入れて、熱湯を注いで作るというスタイルで、なかなかユニークで尚且つ新しい。そのまま飲んでもよいし、つけ汁に入れてもよい。
――お店のデザインや内装や外装で配慮したことはありますか?
引頭 もちろん、菊地さんと細部に行き渡るところまで、検討致しました。お客様の目線の先にクルマがあるようにレイアウトをしたり、動線が流れるよう使いやすい構造にも配慮致しました。今はわりとゆったりとテーブルが配置されていますが、季節やイベントなどで対応していこうと思っております。食器類も菊地さんにデザインをして頂きました。
菊地 食器類は特注品です。備品、その他レイアウトなどもすべて共同で練り上げました。お客様には「メルセデス ・ベンツ」と「Minatoya 3」の創りだす新しい文化を感じ、そして楽しんで頂けますと、嬉しいと思っております。
そば皿には、メルセデス・ベンツのゴールドカラーの“me”が躍る。汁椀も含めすべて丹念に製作したそうで、鮮やかな花模様やロゴが絶妙なバランスで配置されている。高台の底にはKIKUCHI Art Galleryの刻印が入り、すべてにわたり「お見事」という言葉に尽きる。

美味しい余韻と記憶を残して、「Minatoya 3」を後にした。
菊地剛志さんは人の思いを大切にする方である。所作も淀みなく、いつも先を見つめている。「Minatoya 3」による菊地さんとメルセデス・ベンツ日本との出会いが、これからどんな未来を創っていくのか楽しみである。「Minatoya 3」に長蛇の列ができて、六本木の新しい名所になる日も近いと思う。
写真=坂崎仁紀
INFORMATION
Minatoya 3
住所 東京都港区六本木7丁目3番10号
営業時間 11:00~15:30 (15:00L.O) 17:00~22:00 (21:30 L.O) 売切仕舞い
定休日 年中無休(年末年始除く)
(坂崎 仁紀)