静岡市の50代の男性職員が2014年12月に自殺したのは、部下からのパワーハラスメントなどが原因だとして、職員の遺族が10日、市に約6200万円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁に起こす。代理人弁護士が9日明らかにした。職員の自殺は公務災害に認定されているが、市は「パワハラは確認できない」との内部調査をまとめ、遺族への謝罪も拒否している。裁判でパワハラの有無が争われることになる。
訴状によると、市の外部機関に勤務していた職員は14年4月ごろ、部下の男性から仕事の遅延を責められるようになり、同9月以降は「いいかげんにしろ。やると言ってやっていないじゃないか」などと、1日1回程度罵倒された。職員の手帳には「逆パワハラを受けている」などと記されていた。また、パソコンの記録などから自殺する4カ月前から月100時間を超える時間外勤務があった。
職員は同12月24日に職場で首をつって自殺した。遺族側は、職員の上司が部下に注意したり、時間外勤務を改善したりするなどの安全配慮義務を怠ったとしている。
地方公務員災害補償基金静岡市支部は昨年6月、「繰り返された叱責や罵倒は強度な精神的負荷だった」と指摘し、職員の自殺は精神疾患によるもので公務災害と認定した。遺族は市に関係職員の処分や謝罪などを申し入れたが、市は内部調査の結果、厚生労働省が示すパワハラの要件には該当しないと結論付けた。
市広報課は「訴状が届いていないので、コメントできない」としている。【池田由莉矢】