日本の司法制度や検察への批判を展開し、自らの潔白を強調した日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)の記者会見について、日本の有識者からは「抽象的な話が多い」「一方的な主張だ」と厳しい声が上がった。
元東京高裁部総括判事の三好幹夫上智大教授は「抽象的な話が多かった。逃亡までする理由を納得した人はいるだろうか」と首をかしげる。ゴーン被告は長期にわたる公判手続きへの不満をあらわにしたが、「難しい経済事件で時間がかかるのはある意味、仕方がない。フランスでももっと時間がかかる事案はある」と指摘。逃亡動機の一つに妻キャロル容疑者との接触制限を挙げたことに対しても、「制限された理由は自身が一番分かっているはず。それで法の外に出て行くのは倫理観が欠けているのではないか」と述べた。
「根拠の乏しい期待外れの会見だった」とみるのは元特捜検事の吉開多一国士舘大教授。「記者会見で身の潔白を証明するには説得力のある証拠を示す必要があったが、一方的な主張をしただけだった」と話す。
言語が通じないなどの不満の訴えには「外国人の勾留中の対応には、特に配慮が必要なこともあるだろう」と一定の理解を示した。一方、逮捕は不要だったとの主張に対しては「特捜部は高度の嫌疑が確認できるまで逮捕に踏み切らない。実際に国外逃亡した者が言うのは全く説得力を欠く」と断じ、「諸外国に比べて日本の刑事司法の正確性は高い。外国人を差別することもありえない」と語った。
否認していると長期勾留が続く「人質司法」の問題に詳しい大出良知九州大名誉教授は、「自身の正当性をアピールするあまり、日本の刑事司法の問題性は埋没してしまった」と残念がった。「『1日8時間の取り調べで自白を強要された』といった発言はあったが、リアルに受け止められなかったのでは。批判する場として場違いだった感は拭えない」と話した。