「日本でここまでの被害にあうとは」「救助のスピードすごい」外国人が見た大雨災害

8月末の記録的な大雨で甚大な浸水被害を受けた佐賀県武雄市朝日町の「中山鉄工所」では、専門技能を持つ「高度人材」として働く外国人労働者がいる。慣れない土地での被災に不安はなかったのか――。被災直後の鉄工所を訪ねた。【竹林静】
インド出身のムハンマド・ザファル・アラムさん(29)とアトゥル・サルタックさん(27)、インドネシア出身のラディッティア・ルスミプトロさん(27)は、水力発電所などを設計するエンジニアとして働く。3人は母国でも水害の経験があるが、「まさか日本でここまでの被害にあうとは思わなかった」と驚きを口にした。
8月28日朝、鉄工所の渡辺美信次長(47)は雨の降り方に危険を感じ、社員らに「落ち着いて寮に居てください」と指示。3人は周囲の道路が冠水したため身動きが取れず、鉄工所内の2階建ての寮で待機を続けた。
ムハンマドさんは「インドでは川が氾濫しても1日かけて水位が徐々に上がっていた。1、2時間で水位が上昇し、どこまで(水が)くるのかと怖かった」。約4カ月前に来日したアトゥルさんは「道路が川のようになっていた。地球温暖化の影響なのか、雨の降り方が普通ではなかった」と振り返る。
3人にとって新鮮な光景もあった。日本人の救助に駆けつける早さだ。車のバンパーが水につかるほど水位が上がった同日、自衛隊がボートで物資を届けに来た。「インドネシアでは考えられない早さで駆けつけてくれた。ボランティアの助け合いの精神もすごいと思う」とラディッティアさん。その後も県国際交流協会などから困った事がないかとメッセージをもらい、心強かったという。
鉄工所は、10月に予定される消費税増税前の駆け込み需要の時期だが、数台のフォークリフトなどが水没する被害を受けた。取材に訪れた日も、3人は「早く元通りに働きたい」と工場内の片付け作業に追われていた。現在も作業は続いているが、今週初めから稼働再開しているという。