高齢入所者が熱中症 搬送先も停電…守れなかった命 千葉・君津の施設

千葉県内の高齢者施設は13日現在も50施設で停電、28施設で断水が続いた。各施設は自家発電装置や電源車を頼りに命を守るが、12日に熱中症の症状で死亡した女性(82)が入所していた君津市の特別養護老人ホーム「夢の郷」の天笠(あまがさ)寛理事長は「一刻も早く電気を」と訴えている。
天笠理事長は14日に毎日新聞の取材に応じ、女性が亡くなるまでの状況を説明した。
11日午前9時5分、要介護度5で車椅子を利用していた女性は朝食をとらず38・8度の高熱が出たため、施設は救急車を要請。施設の看護師も付き添って乗り込んだ。救急車から市内の病院など5カ所に受け入れを求めたが、いずれも停電などのため断られた。救急車は約40分間、施設に止まったままだった。
同10時過ぎ、外来診療を受け付けていた市内の病院に搬送された。医師の診察は受けたものの停電で十分な治療ができないため、正午過ぎに木更津市の災害拠点病院である君津中央病院に搬送された。11日の木更津市の最高気温は32度超。女性は12日朝に息を引き取った。
この間、施設では約100人の入所者のうち10人程度が熱中症とみられる体調の異常を訴えていた。施設職員は窓を開け放ち、ポリタンクに水を入れて階段で3階まで運び、ぬらしたタオルで入所者の首元を冷やすなどして対処したという。
13日未明になって電力会社の電源車が到着し、エアコンが使えるようになった。施設裏手の電柱は倒れたままで、電気の復旧の見通しは立っていない。
県によると13日現在、高齢者施設以外でも障害者など27施設が停電、19施設で断水が続いた。【上遠野健一】