台風15号による大規模停電の復旧が遅れ、市民生活に深刻な影響が出ている。一日も早い停電の解消と被災者への支援が求められる。
停電は首都圏を中心に7都県で最大93万軒に上り、今も千葉県で多くの人が電気のない生活を強いられている。全面復旧には、さらに2週間程度はかかるという。
電気は、生活インフラの要である。12日時点でも3万戸が断水し、一部地域では携帯電話がつながりにくい。多くの病院や福祉施設でエアコンが使えない。患者や入所者の熱中症が心配だ。電源車の配置を急がねばならない。
停電や断水で、冷蔵庫やトイレ、風呂が使用できず、被災者の身体的、精神的な負担は大きい。食料や飲料水の提供など、生活支援が欠かせない。一人暮らしの高齢者の安否も確認してもらいたい。
復旧が遅れている最大の原因は、配電線などが大規模に損壊した上、倒木で道路があちこちで寸断されているため、作業員が現場にたどりつけなかったことだ。
東電は当初、11日中の全面復旧を目指すと発表していたが、大幅にずれ込んだ。見通しが甘かったと言わざるを得ない。
被災者からは「いつになったら電気が使えるようになるのか」といった
苛立
( いらだ ) ちの声が上がる。
東電は「倒木などの被害が想定を超えていた」と釈明する。ただ、早期復旧が可能だと受け取られる情報を発信したことが、混乱を招いた面があるのは否めない。
台風による大規模停電は、昨年9月にも起きた。関西電力管内で延べ約220万戸が停電し、全面復旧に2週間以上を要した。
関電は、停電時に現地調査にあたる人員を増やし、被害確認に使うドローンの配備を進めている。山間部の多い和歌山県とは、倒木の撤去など復旧作業で連携する協定を結んだ。こうした教訓が、今回生かされていたのだろうか。
東電は、福島第一原子力発電所の事故の賠償負担などで経営が悪化した。電柱など送電・配電関連の設備投資を抑えている。防災や安全対策の投資が十分だったのか、検証する必要があろう。
行政の対応にも課題がある。南房総市では、防災行政無線の基地局で自家発電の燃料が切れ、市民への連絡ができなくなった。千葉県は一部の自治体との通信が途絶え、被災状況の把握が遅れた。
自然災害は近年、激甚化している。電力会社や行政は災害が起きた際に、インフラを迅速に復旧させる重要性を再認識すべきだ。