「日本は財政破綻する」はウソ…国のB/Sを用いて解説

―[あの企業の意外なミライ]―

<日本経済はヤバい><大借金大国、ニッポン><先進国の中で、日本だけが取り残されている>

そんな見出しや、タイトルを冠した書籍を目にしたことはないでしょうか。もっと事実ベースで言えば、日本経済は、アメリカ、中国にGDPで遅れをとり、1300兆円の負債を抱える大借金国。このままいけば、ギリシャのように破綻する…。メディアでは、そんな危機を煽る文言が飛び交っています。

危機を煽られれば、私たちは当然怯えます。このまま日本にいていいの? 国外脱出しかないのでは?今回は、そんな「日本ヤバい論」が本当なのか、データを読み解きながら3分程度で解説していきましょう。

結論を急げば、「日本ヤバい論」は間違っています。むしろ、日本は世界で一番のお金持ちなのです。

◆借金あっても、収入あれば大丈夫!

さて、話をわかりやすくするために、便宜的に日本を一つの企業として捉えてみましょう。日本という企業は、いまどのくらいの力を持っているのでしょうか?

現在の日本の借金は約1300兆円(※参考:日本銀行調査統計局より)。とはいえ、借金の総額だけをみても国の財政の健全度はわかりません。「資産」や「収入」が十分にあれば、破綻の心配はないのです。今月SupremeとLOUISVUITTONのカバンをアメックスで買いすぎたキャバクラ嬢も、アメックス・プラチナカードの引き落とし日までに鬼出勤して収入を増やせば、問題ないのと一緒です。

また、企業のバランスシートで考えてもそれは明らか。100億円の借金(=負債)があっても、1000億円の現金預金(=資産)があれば、企業の財務諸表は健全な範囲と言えます。企業経営でも、国の財政状況も、資産と負債の両方を見なければ借金が多いのかは判断できないのです。

◆日本は借金大国。でも…

現在、政府の負債合計は1335兆円です(2019年9月末時点)。その中でも、特に目立つ項目は「公債(国債)」の966兆円。

966兆円、たしかに借金の額は多いです。「桃太郎電鉄」を100年プレイしても見たことがない額です。一方で政府の「資産」と比べてこの額は大きいのでしょうか?

日本の資産を見ると、その額は約620兆円。これは、国際的にかなり大きな額です。

いわば日本は、ブランド物で散財し、ハワイに一ヶ月で2回行くほど借金をしても、実家の壺や不動産を売ればなんとかなる“大資産家の娘”なのです。(日銀公表部門別の金融資産・負債残高を参照)

結果、日本の本当の財政状況は以下の式で示せます。

政府資産(620兆円)+外貨準備高(約140兆円)=760兆円

外貨準備高とは、なんでしょうか。これは、政府や中央銀行が保有する外貨建て資産のことです。つまり、日本は借金966兆円に対して、資産760兆円の国。借金の額はそれほど大きくないことがわかるのではないでしょうか。

◆日本の借金は、ヤバくない借金

そもそも、日本という国が抱えている「借金」ってなんのことでしょうか。これまで、池上彰さんが100回以上解説していそうな話ですが、ひな壇にいる劇団ひとりさんの気持ちになって改めて耳を傾けてみてください。

日本政府が年間で32兆円発行する国債(公債:約1000兆円※A)は、民間・個人からの借り入れ。
(※A 補足:以下の2つを合わせて「公債」)
*国債:税収の不足を補うために、国が発行する債券
*地方債:税収の不足を補うために、地方公共団体が発行する債券

償還が来れば、利回りと共に民間経済に戻されるものです。

国債は債券なので、発行している者にとっては負債ですが、それを保有している側にとっては資産です。貸している側(民間企業や国民)にとっては、いざとなったら返してもらえるお金は資産だよね、ということです。つまり、国の借金が積み上がっている一方で、ほぼそれに見合う資産を日本国民が持っているのだとすれば、問題ないという見方もできます。

つまり、「政府負債」が増えるほど、それ以上に「民間資産」が増えることになるのです。Aくんが、Bくんから借金するほど、Bくんの資産は増えるのです。(補足:増税をすることで国債償還するケースは別。増税により民間預金は「減る」、国債の紹介により預金は「増加」。資産として保有していた国債はなくなり、国民の資産は純減する)

◆日本政府の金融資産額は…世界一!

さらに驚くべきは、政府の金融資産の大きさです。なんと、日本政府の金融資産額は、世界一なのです!財務省の平成 29 年度国の財務書類(一般会計・特別会計)を見てみましょう。

日本の金融資産は、現金・預金が約47兆円。これは金庫にある手元資金や、政府が日銀の口座に預けている預金のことで、ここから国家公務員の給料や役所の備品購入、公共事業の工事代金などが支払われます。

それぞれ他の項目も簡単に解説しましょう。

・有価証券(約118兆円)――有価証券の保有額。
・貸付金(約112兆円)――特殊法人や独立行政法人などへの貸し付け。
・運用寄託金(約111兆円)――年金積立金のうち政府が運用している金額。

これらを含めて、結果的に日本政府の金融資産の総額は500兆円近くにものぼるのです。そう、日本は、世界で一番の金融資産額を持つのです!

◆日本の家計は大丈夫?

次に、日本国のP/Lを分解してみよう。簡単に言えば日本という国の家計のことです。

国の一年間の支出を表したのが「歳出」です。その内訳を見ると、医療、年金、介護などの費用である「社会保障」が34兆円と、全体の約3割を占めています。さらに、「公共事業」が6.9兆円、「文教及び科学振興」が5.6兆円と続きますが、これらは、民間のB/Sの資産に寄与するものになります。「民間のB/Sの資産に寄与する」とはどういうことでしょうか。

公共投資を例にとってみましょう。

建設需要が拡大すると、ゼネコンの利益が増加しますよね。結果、ゼネコン社員の給料は増えます。ゼネコン社員は日本国民です。つまり、国民の所得も増加する効果があるので、歳出は、民間の経済活動を活発化させるお金でもあるのです。民間の資産が増加すれば、その中から税金として政府の歳入に入る額も増えます。

今の話を簡単にまとめると、以下のようになります。

政府歳出(ゼネコンに橋をつくってもらう)

公共事業(ゼネコン、橋をつくる)

民間資産(ゼネコンにお金がたまる)

税金(ゼネコン社員お金使う、結果的に税金払う)

政府歳入増加(税収アップ)

◆日本の稼ぐ力はどのくらい?

ここまでの話をまとめます。

日本は、借金はあっても資産はあるので大丈夫。歳出も、税収アップにつながるので大丈夫。

もう、大丈夫すぎるのです。では、最後に日本がどれくらい稼ぐ力があり、何で稼いでいるのかを解説しましょう。その指標を示しているものが、「経常収支」です。

経常収支とは、貿易やサービスなど、海外との取引で生じた国全体のお金の収支のことです。

2018年の日本の経常収支は19兆円。

つまり、一年間で19兆円の稼ぐ力があるのです。

対して、29年前の1989年度(平成元年度)の経常収支は、約9兆円。黒字の規模は約30年で2倍以上になっているのです。さらに、その中身も大きく変わっています。

経常収支のメインは、2011年前後を境として貿易ではなくなってきています。では、なんでしょうか?

◆いまの日本の稼ぎ頭は、貿易ではなく…

答えは、第1次所得収支。「第1次所得収支」って、なんでしょうか? その内訳は、大きく分けて2つあります。

【第1次所得収支】
1 海外子会社のもうけである直投収益 14兆7198億円
2 外国債券の利子などの証券投資収益 9兆7659億円

一方、過去メインだった貿易黒字は今や1兆1981億円となっています。「海外子会社のもうけである直投収益」って、なんのことでしょうか。簡単に言えば、日本企業が海外に進出して儲けている額のこと。そのままですね。

かつて、日本の製造業は国内でクルマや家電を作って、海外に輸出していました。が、今では海外の工場建設やM&A(合併・買収)が積極的。こうした各企業の行動が、日本経済の経常収支の数字となって現れているのです。

では「外国債券の利子などの証券投資収益」とはなんでしょうか。これは簡単、海外への投資で稼いだ額のことです。

つまり、日本経済はかつての「貿易による稼ぎ」から、「投資による稼ぎ」に切り替わっていたのです。以上、日本という国をひとつの企業として捉えた場合の“家計情報”を簡単に見てきました。

この国の将来への不安感が、少し薄れたのではないでしょうか?

安心して稼いで、安心してSupremeのバッグを買って、安心してハワイ旅行にも行ってくださいね。

【馬渕磨理子】
日本テクニカルアナリスト、(株)フィスコ企業リサーチレポーター。日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでマーケティングを行う。Twitter@marikomabuchi

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