第1志望落ちた子に親がかけてはいけない言葉

いよいよ受験シーズン本番。残念ながら第1志望に落ちてしまった場合、親は子どもにどんな言葉をかければよいでしょうか(写真:Fast&Slow/PIXTA)
いよいよ2020年。待ちに待ったオリンピックの年ですね。でも、毎年1月、2月は受験シーズン真っ盛り。受験生の子どもを持つ親御さんは、それどころではない心配事がある時期です。もちろん、親としては子どもにベストな結果を出してほしいし、子どももまったく同じ気持ちです。
でも、現実はそう甘くありません。全員が全員、第1志望に合格する、ということは定員があり、倍率がある受験の仕組み上、残念ながらありえません。
そこで、今回は残念ながら第1志望に落ちてしまった子どもに親がかけてはいけない言葉をご紹介しましょう。このタイミングでの親の一言は、子どもの人生において大きなインパクトをもたらします。子どもの将来を左右する一言なのだ、というくらいの気持ちで子どもと接するようにしましょう。
そのために、まずは受験前の子どもの心理状態というものを知ることが必要です。そして、それを知ったうえで、子どもの人格的成長を助けるような発言が親には求められます。
日本の受験における選抜プロセスは、程度の差こそあれ、「同じ問題について、同じ制限時間で、決まった正解を答える」という内容の試験によって行われます。そして、試験前の半年、場合によっては何年もの間、この試験で高得点を出すために同世代の子とともに猛勉強するのです。
正解が決まっている試験ですから、正解か、不正解かで得点が出ることとなり、その点数の多寡によって合否が決まる仕組みです。
この競争プロセスに長期間浸っていると、誰もが必ず視野が狭くなります。「この試験に受かるかどうか」というのが人生の成功失敗を決めてしまうような、そんな感覚に陥るのです。
私自身の開成中学受験のときも「全部落ちたらどうしよう」、言い換えれば「全部落ちたら自分の居場所、存在価値はなくなるんじゃないか」と不安になっていました。ぐるぐると自分の中で思考が旋回し、マイナスなことを考えがちになってしまうのが、受験生の試験前の心境です。簡単に言えば、受験の「結果」だけに考えがフォーカスしてしまうのです。
そんな「結果」だけにフォーカスしてしまう視野の狭さの中、肝心の結果が出ればよいですが、出なかった場合には、それこそ、この世の終わり、というばかりに目の前が暗くなってしまいます。
一生懸命頑張ったのに第1志望に落ちてしまった場合には、「どうせ自分は……」というネガティブな考えに心が覆われてしまい、自己肯定感が著しく下がってしまう子どもがほとんどです。
自己肯定感が低い、というのは、自分の可能性に対して自信が持てない、ということですので、将来的にもいい影響を及ぼしません。この心理状態はしっかりと子ども自身が打破するべきものです。
では、そんなとき親はどんな言葉をかけるべきでしょうか。ここで最もやってはいけないことは、「結果」にフォーカスした発言をすることです。
「なんで落ちてしまったんだ。勉強が足りないんだろう」「遊んでばっかりいるから、部活ばかりしているから、落ちたんだ。もっと勉強すればよかったのに」
といった、「落ちた」という結果にだけフォーカスし、詳細も知らないのにその原因を探ろうとする発言が、最もかけてはいけない言葉です。
受験に落ちた原因は、それはそれで、追って学校の先生なり塾の先生とすればよい話であって、親と一緒にするものではありません。親は講師ではなく同志であるべきであり、子どもにしっかりと寄り添う必要があります。
上記のような発言をすればするほど、自己肯定感はますます下がりますし、それがあるところまで行ってしまうと、「ぷっつん」してしまい、今後一切勉強しなくなったり、親に非常に反抗的な姿勢が定着してしまったりするでしょう。
こんなときにかけるべきは、「結果」ではなく「過程」にフォーカスした言葉です。
「お父さんは(お母さんは)、◯◯がいつも夜勉強しているの、知っていたよ。よく頑張ったね。お疲れ様」
こういった「過程」を承認する発言が有用です。少しでも自己肯定感を回復する可能性があります。
もっと言えば、実は何も言わないのがベストです。結果を知って、一緒に泣くだけで十分。親が泣くところなんて、子どもはめったに見ませんから、親が同志として一緒に受験プロセスを考えてくれていた、ということはしっかりと伝わります。ひとしきり泣いたら、まったく関係のない話をして盛り上げてあげるだけでも、子どもとしては十分に癒やされます。
親は、子どもの心情に寄り添い共感してあげるだけで十分であり、一緒に落ちた原因を究明する必要はないし、まして、落ちたことを叱責したりするのは論外です。
親が高学歴だったりすると、子どもへの期待度が高く、受験に落ちて叱責する、ということがよく起きるのですが、これは単なる親のエゴ(「俺の子どもなんだから受かるに決まっている。受からないのは勉強していないからだ」といった考え)の押し付けにすぎません。親と子どもは別人格であり、「俺ができるんだからお前も」というジャイアン的な考え方は通用しないと思ってください。
最後に、第1志望には落ちたが第2志望には合格した場合(とくに大学受験の場合)、第2志望に行くか浪人して第1志望を目指すのか悩む、ということが起きます。
この場合には、親としては意見を求められたときにだけ自分の意見を言うようにしましょう。そして、ここでも押し付けは厳禁で、あくまで子どもが決める、という形を取るようにしてください。理想的には、どちらの選択肢も正解になりえることを言及するべきです。
「◯◯大学に行っても十分将来の可能性はあると思うよ。もちろん浪人しても長い人生だから1年くらいどうってことない。第1志望の◯◯大学をもう1度目指すというのもいいと思う」
実際、どちらを選ぼうとも、子どもが納得して選択できたのであればそれは正解です。人生なんて、その後も結婚、出産、転職、住宅購入など、選択の連続です。つねに正解を選ぶという発想では何もできず、選んだ道を正解にするのがあるべき姿でしょう。
視野が狭くなっていて、「第1志望だけが正解」という考えにお子さんがとらわれているとしたら、その考えを解きほぐして新たな気づきを与えてあげるのが親の役目だと私は思います。お子さんが納得のいく選択をする後押しをする、というスタンスでアドバイスすれば、自然とそうした発言になるはずです。
皆さんのお子さんが、納得のいく人生を選択することを強く強く願っています。最後まで同志として駆け抜けてください!!