【横山光昭】衝撃!共働きで「財布を別」にしている夫婦は「離婚」を招く可能性 人気FPが明かす「意外な真実」

夫婦で共働きが当たり前の時代になっています。
子供を出産後、一時的に休職しても1年から3年程度で復職するのは普通でしょう。これからの時代、働くことに積極的であるべきだと思いますし、そうでないとダメだと感じています。ですから復職するように努めることは良いことだと思います。
しかし、共働きでは“個別で収入をあげていくことのルール”みたいなものがないと問題が発生する可能性も充分にあると思います。
それはともかく、共働きの場合どうやって家計の管理をすればいいのでしょうか。これが今回のテーマです。共働きの家計管理は大きく二つの方法があります。

一つはそれぞれが自分の収入を管理し一定額を家計に対して負担する方法。夫が20万円、妻が10万円などと負担額を決め合計の30万円で妻が家計をやりくりするというやり方です。
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また、この派生形として住居費や光熱費などの固定費を夫の口座から引き落とし、食費や医療費などは妻が自分の口座から出すというやり方もあります。負担の仕方は異なりますが、自分の収入は自分のものというのが前提となるため「独立管理型」と言っていいでしょう。
これに対してもう一つは、一旦それぞれがもらった給料を一つの口座にまとめて、すべての支出をここからまかなうというやり方です。「ミックス管理型」ということでしょうか。二つのうち、私は後者をおすすめしています。
前者の場合、合理的といえば合理的なのですが問題もあります。
例えば夫が固定費、妻が流動費を負担する場合、夫が負担する額は常に一定ですが妻が負担する部分は妻の裁量で減らすことが出来ます。最近おかずの数が減った気がするが、あれは妻が自分の負担を減らしているのではないか……と疑ってしまうかもしれません。
また、なにをどちらが負担するかということで不公平感が出ることがあるでしょう。かつては男性の方が一般的に収入が多かったため、夫が多くを負担すればよかったのですが、最近はそうとは限りません。
妻の方が多い場合は妻が多くを負担すればいいのかもしれませんが、その場合夫の肩身が狭くなる。これでは夫婦関係がギクシャクしてしまうことにもなりかねません。

それぞれが負担する部分以外について干渉しなくなるため、結果として相手に対する人間としての関心が薄れる危険性が高まるかもしれません。それぞれが勝手に貯金をしたり運用をしたりしている間はいいのですが、場合によっては相手に内緒で借金をしてしまうということもないとは言えません。
実際、私のところに相談に来る人の中には、配偶者が知らない借金で困っているというケースがけっこうあるのです。統計を取ったわけではないのですが、個人的な印象としては、離婚した夫婦はこうした「独立管理型」が多かったのは間違いないと感じます。
これに対し「ミックス管理型」のメリットは家計の管理がうまくいく確率が高いことです。すべての資産は家族の共有が前提になるため、どうやって管理するか、またどうやって増やすかについて、それぞれが真剣に考えるようになります。
結果として一人で考えている時には思いつかなかったアイデアが出ることも多々あるのです。また、二人で相談することで、夫が自然に家計管理に参加していくようになるのも見逃せません。互いにお金のことを話し合うのです。
一般論として、女性は目の前のお金を管理するのが得意です。要はやりくり上手なのです。家計簿をつけるのも女性のほうが得意でしょう。
ところが長い目でみた計画を立てたり、それを達成したりする能力については苦手という人も多いのです。むしろこの部分は男性の方が長けている気がします。
今現在は見えていない、気にしていないが、将来はけっこう見えている。それに向かってどう努力すればいいかもわかるのが男性です。それぞれ一長一短ですが、二人が協力して苦手部分を補うことで、死角がない強い家計ができあがっていくのです。
では、具体的にどうやって管理をすればいいのか。

夫婦それぞれの給与の振り込み口座を一つにする方法もありますが、むしろ給与の振り込み口座は別に持ち、振り込まれた給与を夫や妻の給与口座ではない「家計管理専用口座」に一旦移動する方がいいでしょう。多少面倒ですが、そのほうが給料の増減も分かりやすく、家計費を一つに合わせる際に「今月の収入がいくらなのか」を把握しやすいからです。
家計はシンプルに分かりやすくすることが何より基本です。
クレジットカードや会社の経費の立替などが入ると訳が分からなくなりがちなのは、その月での収支が分からなくなっているからです。そういったこともあり、バカ正直なくらいに素朴に管理をするほうがいいのです。
実際、わが家は家計管理をしやすくするために、ネット銀行を利用しています。手数料を節約できますし時間も選びません。
場合によっては夫の給与振り込み口座を家計管理口座として使い、妻は給料が出るとそこに移動するという手もあります。ここで合体させたものを二人で協力しながらやりくりするのです。努力の結果、余ったお金は貯蓄用の別口座に移すのがいいでしょう。
ここで注意したいポイントは先ほどと同様、今月の収支が把握できるようにしておくことです。今月の収入が分かるように意識をしないでいくと、今月は黒字なのか赤字なのかがわかりません。
余ったお金(口座に入っているお金)で生活できればいい、使い切ったっていい、というような感覚にならないようにしてください。
こうして毎月月末には一旦精算することで、毎月の成果がわかりやすくなります。貯蓄に回せた金額もわかるから、モチベーションが上がるでしょう。
ここで重要なのは、お金について夫婦で話をする機会をできるだけ増やすことです。お金について語り合うことで、人間関係の風通しもよくなるでしょう。

夫婦の関係がよくなると、お互いの幸せを考えるようになります。もっと働いて稼げるようにしようという気持ちにもつながりますし、結果的に貯金も増えるから、目標に到達するまでの速度にも加速がつく、まさにいいことばかりです。
ただ、なんでも隠さずオープンにするのがいいと言っても、100%をお互いが管理してしまうのも考えものです。いくら夫婦とは言っても、それぞれのプライバシーはあるべきですし、踏み込んではいけない世界というのがあっても当然かもしれません。むしろ、そうした「遊び」の部分が多少あることで、お互いを信じる気持ちも強まるのではないでしょうか。
そこで、それぞれが相手の許可なく使える一定額のお金を持つようにしてみてはどうでしょうか。つまり、お互いが一定のお小遣いをもらい、それについては使途不明金にしてもいいと決めるのです。
全額を家計費用として管理して自由に使える枠がまったくなくなってしまうと、特に男性はそうなのですが、どことなく家計にお金を取り上げられたという気持ちを持ってしまうことがあります。こうした気持ちを抱えたままでいることは決していいことではありません。一生懸命働こうという気持ちも減退してしまいます。
そこで、少しでもいいので自由に使えるお金を持つことが重要なのです。ボーナスが多く出たときなどは、臨時の小遣いとしていつもより多く自由なお金をもらってもいいでしょう。がんばれば、それに見合うだけのいいことがなければ長続きもしにくいものです。ご褒美といった感じです。
ただ、その場合も「俺ががんばったのだからいっぱいもらうのは当然だ」というのではなく、夫婦で話し合いお互いが納得してから増額することは言うまでもありません。
また、お小遣いという名目や感覚が馴染まなければ「ご褒美代」「がんばった代」として話し合いの元家計から捻出するように努めていくといいでしょう。

極端に言えば、まずはお互いの収入の合計を計算し、次にだいたいでいいので家計の支出を計算します。貯金も差引き余ったお金はお互いの小遣い(夫婦それぞれの自由なお金)にしていくといいでしょう。
結果として貯金もでき、それぞれのお金も確保できるのですから気は楽になると思います。そうするためには、やはり夫婦間での話し合いは必須となりますし、ルールや工夫ももちろん大切になります。
工夫の例えの一つとして、食費など日々の支出管理については専用のお財布を決めて、自分の小遣いと分けてしまうというやり方があるでしょう。そうすれば、お互い今月はあといくらで生活しなければいけない、ということが一目でわかります。こちらもシンプルイズベストの考え方です。
よく月末になって家計費が足りないと奥さんが自分の「へそくり」などから補充する場合もありますがそれは感心できません。足りなくなった段階で夫婦の話し合いを持ち、どうするかを決めるべきなのです。大切なのは足りなければ足りないと気づける仕組みで過ごすということなのです。
なにか買いたいものがあった時も、それは小遣いで買うべきなのか、それとも家計から出してもいいのかを話し合うのがいいでしょう。一見無駄に見えても実は将来の投資になる、という説明し、それが認められれば家計から出してもいいと思います。
コンピュータのCMで犬を飼いたい子供がITを駆使して親を説得するというのがありましたが、ああいったことをお金の使い道でも実践するわけです。

なぜ私が夫婦で話をして共同で管理することにこだわるのか。それは私のところに相談に来る人の中で、所得は少なくないのに貯金が出来ないと嘆いている人の多くは、夫婦それぞれがバラバラに貯金しようと努力しているケースが多いからです。
それぞれが一生懸命だし貯金に対しても前向きなのですが、一人だけでやっているため、長続きしないとか、苦しいだけで終わってしまい、成功しないのです。
もちろん二人でやったって苦しいことに変わりはありません。買いたいものを我慢するのは誰だって辛いことです。しかし、そんな時夫婦で共同していれば、相手ががんばっているのだから自分もがんばらなければという気持ちになれるのです。
自分がちょっと我慢して、その分相手が我慢する量を減らしてあげようと考えるかもしれません。その気遣いが相手に伝わり、今まで以上にがんばれる。こうした好循環が生まれれば最高です。
ただし、既に結婚してかなりの時間が経過しこれまでは「独立管理型」をしてきた夫婦が突然「ミックス管理型」に変えるのはかなり難しいのもわかります。ご主人がリストラされたといったような大きな経済環境の変化でもなければ、なんとなく言い出しにくいでしょう。
そんな時は、今まで貯めたお金はそれぞれの分としてこれからもお互いが管理していき、新たな収入について「ミックス管理型」をするようにしよう、と提案してみてはどうでしょうか。そうしないと、自分が苦しいから相手に助けてくれ、と言っているだけに聞こえてしまうかもしれませんから。
こうした面倒をなくすためには、できれば結婚前のおつきあいの段階から将来家計はどう管理していくのかをある程度決めておくのがベストです。

実は私の事務所はこうしたおつきあい段階のカップルを対象に、理想の家計を作るための心構えや家計管理の仕方をアドバイスするサービスも行っています。結婚費用を共同で貯める上でのアドバイスをすることを通じてお互いのお金に対する考え方や使い方をすりあわせるというものです。
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お互いがお小遣い帳を付け、目標達成までの道のりを共有することで、より関係を深めようというものです。こうしたお金の価値観が理解できていると、結婚してからもお金の使い方でもめることは激減します。
これまでにこのコースを利用したカップルは15組程度ですが、そのなかに離婚したカップルは一組もいないのがなによりの証拠です。
中には結婚前から相談に来て、めでたく結婚資金を貯めてゴールイン、その後は子供が生まれて今は子供も交えてお金についての家族会議を開いているという人もいます。決して収入自体は多い家計ではありませんが、貯金は相当の金額になっています。理想の家計と言えるでしょう。
お金は単にものを買うためだけに存在しているのではありません。使い方次第では家族や夫婦の絆を深めるためのツールにもなります。
だからこそ、夫婦で一つの財布を管理することはそのための第一歩と言えます。話をすることによりあなたの収入から貯蓄を作る可能性を広げていくのです。