明るさによって表情が一変する仏像が、三重県鳥羽市の離島・答志島の潮音寺(ちょうおんじ)にまつられ、参拝に訪れた島民らを驚かせている。
境内の観音堂に安置された3体の聖(しょう)観音像のうち中央の仏像。明かりをつけると、きりっとした顔つきで下をにらんでいるが、室内の自然光に戻すと正面を向いた穏やかな表情に変わる。
島内で旅館を経営する中村久弘さん(66)によると、この変化に気付いたのは7年前。テレビドラマの撮影で投宿していた女優の白石美帆さんに同行し潮音寺を訪れた。仏像の拝観が趣味という白石さんは「制作された昔のように自然の光で見たいので、電気を消して」と要望。明かりを消すと中央の聖観音像の表情が一変したという。
中村さんは「白石さんをはじめ誰もが驚いた。長くこの島で暮らしているが、気付かなかった。穏やかな観音様に出会え、心が洗われます」と、白石さんに感謝している。島内でも知る人は少ないという。
聖観音像は平安から鎌倉時代にかけて制作され、別の1体は市の文化財に指定されている。【林一茂】