厚労省水際対策担当審議官 自らの不倫疑惑の水際対策に懸命

第一線では医師、検疫官、チャーター便のクルーたちが官民挙げて献身的な水際作戦を展開している。その一方で、現場から離れた“安全地帯”である永田町の惨状は、目を覆いたくなるばかりだ。現場を混乱させて足を引っ張る役人、“神風邪”とほくそ笑む不届きな政治家たちである──。
対応が後手後手なのが厚労省だ。“船内感染”が広がっているクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応がその最たる例だろう。同船が横浜に入港した2月3日、厚労省は当初、検査で陰性だった乗客の帰宅を認めると説明していた。
驚かされたのは乗客に新たな感染者が見つかったと発表した記者会見(2月6日)だ。
「クルーズ船内におきまして、発熱などの症状がある方や濃厚接触者の検体を採取して新たに10名を陽性と確認した」
会見に登場したのは国会で首相補佐官との“不倫外遊”が追及されている大坪寛子・官房審議官だった。大坪氏は国立感染症研究所研究員などを務めた内科医で、厚労省では危機管理担当の審議官として感染症の水際対策の責任者でもある。
ところが、大坪氏が和泉洋人・首相補佐官の4度の外遊に同行し、2人が内扉でつながったスイートルームに宿泊していた問題が発覚。記者会見翌日の国会答弁では、「補佐官の部屋を秘書官と私が挟む形で(和泉氏の体調に)万全の態勢を取った」と、補佐官との“濃厚接触”疑惑の釈明に追われる始末。自らの不倫疑惑の水際対策に懸命な状況である。
そうしたなかで、同省の対応は二転三転。現在はクルーズ船の乗客に最大14日間の船内待機を要請しているものの、入港当初は船内の飲食店やサウナが営業するなど、乗客の船内での行動を制限しなかった。
それが感染者が増えてから室内待機を要請。さらに同省は自治体に感染者の搬送先を空気が外部に漏れない病室を備えた「感染症指定病院」と指示していたが、病床の不足を懸念してか、2月9日には一転、「指定病院でなくても患者を受け入れていい」と通達し、現場を混乱させた。
そもそも、政府が1月28日に新型肺炎を「指定感染症」にした際、厚労省は、「10日間の周知期間が必要」という理由で2月7日から感染者の入国拒否や強制入院措置を実施する予定だった。批判を浴びて2月1日に前倒ししたが、もし、同省の方針に従っていれば、感染が未確認だったクルーズ船の乗客がそのまま帰宅させられていた
※週刊ポスト2020年2月28日・3月6日号