相模原殺傷 被告に死刑求刑「障害者を殺りく、残忍で冷酷無比」 横浜地裁公判

相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年7月、利用者ら45人を殺傷したとして殺人罪などに問われた元同園職員の植松聖(さとし)被告(30)に対し、検察側は17日、横浜地裁(青沼潔裁判長)の裁判員裁判で死刑を求刑した。検察側は論告で「結果は極めて重大。一方的に就寝中の障害者を殺りくした行為は卑劣、残忍で冷酷無比だ。動機に酌量の余地はない」などと指摘して、極刑以外の選択肢はないと判断した。
19日に弁護側の最終弁論などを行って結審し、判決は3月16日の見通し。
論告の前に、殺害された19歳の娘の名を美帆さんと明らかにした母親が意見陳述した。母親は事件後に直面した苦難を振り返り「私たち家族、美帆を愛してくれた周りの人たちはあなたに殺された」と言及。障害者への差別感情を崩さなかった被告を「考えも変えず、1ミリも謝罪された気がしない」と切り捨てた。
被告は障害者を排斥する異常な考えから「殺した方が社会の役に立つ」と語ってきた。母親は被告に対して「勝手に奪っていい命など一つもない。そんなこともわからず生きてきたのか」と迫り、「私は娘がいて幸せだった。美帆を返して」と訴えた。
裁判では被告の刑事責任能力の有無と程度が争点となった。起訴後に精神鑑定を行った医師は公判で、被告には人格障害があるものの「(事件時の)行動は統制され意思に反して行われたとは言えない」とし、弁護側が主張する大麻の影響も「なかったか、あっても行動に影響しないほど小さかった」と説明していた。
検察側は論告でこうした鑑定は信用できるとした上で、障害者を排除すべきだと言う被告の考えは、病的な妄想ではなく単なる特異な考えで、完全責任能力があったと述べた。
弁護側は事件当時の被告は大麻精神病やその他の精神障害により責任能力がなかったとして無罪を訴えたが、被告は自分には責任能力があると説明。重度障害者を念頭に「意思疎通が取れない人間は安楽死させるべきだ」と異常な主張を展開している。【中村紬葵、国本愛、木下翔太郎】