削除後も波紋を呼ぶ「岩田告発」。なんと現役厚生労働副大臣が船内ゾーニングの不備がよくわかる写真を投稿、後削除

◆削除後も波紋広がる感染症専門家の「告発」

神戸大学感染症内科教授の岩田健太郎氏による動画(削除済み)が、ご本人が動画を削除した後も波紋を呼んでいる。

現在、同氏は「船内の感染管理の環境が大きく改善されたと聞いている。検疫の経過についての情報も公開され、私が投稿した動画の役割は達成された」とし、当の動画自体は削除済みとなっている(参照:ハフポスト)。しかし、すでにBBCの取材や野党共同会派のヒアリングによる動画、BuzzFeedによる直接取材記事や動画内容の文字起こしがアップされている他、当サイトでも要点をまとめた記事を配信しており、その内容はいまでも知ることが可能だ。

●感染症の専門家、客船内の感染対策を批判 BBCが取材|BBC

●【音声配信&書き起こし】「ショッキングな船内だった」~神戸大教授の岩田健太郎さんに聞く~実際に乗船したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の問題点と、新型コロナウイルス対策」|TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」

●ダイヤモンド・プリンセスはCOVID-19製造機 なぜ船に入って一日で追い出されたのか(岩田健太郎先生の動画から文字起こし)|チョコレートサイダー通信

●ダイヤモンド・プリンセス号に乗船した感染症専門医 「感染しても不思議じゃない悲惨な状況」|BuzzFeed

●神戸大学病院感染症内科 岩田健太郎教授 共同会派ヒアリング

◆Facebookでは現場の厚労省技術参与から反論が公開

また、2月19日22:20時点に、厚生労働省技術参与であり、岩田氏がダイヤモンド・プリンセスに乗船する前にやり取りをしたという高山義浩氏がFacebookで岩田氏への反論を掲載。それを河野太郎防衛大臣を筆頭に、自民党議員や政権擁護がこぞって拡散するなど、大きな波紋を呼んでいる。

この高山氏の投稿には岩田氏自身もコメント欄で反論されているが、岩田氏自身が公の場で高山氏との議論を望まないとツイートされているため、ここではそれらの全ては紹介しない。ただ、一点だけとして以下のツイートは紹介しておこう。

”高山先生は「実際はゾーニングはしっかり行われています。完全ではないにせよ」とお書きになっていますができてなかったのは事実でよって感染の危険を強く感じました。派遣前「クルーズ船の中の本部を外に出すようぜひ進言してほしい。私も何度も主張しているのですが」とおっしゃったのが高山先生です”(岩田氏のツイートより)

◆「頑張っているのに」への違和感

当サイトが高山氏の投稿を見て感じたのは、現場に関与する人々の混乱と大変さであり、現場の医師やスタッフも頑張っている、ということだ。

しかし、気になった点もある。

一つは、岩田氏も主張しているように、「ゾーニング」は「完全ではない」のである。感染症の拡散予防において、ゾーニングは完全に行われてこそ意味をなす。どんなに「頑張って」いようが、「完全ではない」では、「できていない」とほとんど変わらないのではないかということだ。

もう一つは、高山氏の主張がかなり情緒的なものだということだ。「みんな頑張っているんだから、空気を読まないで改善の指示を出されてもみんな煙たがるだけ」というように読める主張には違和感を覚えずにはいられない。現場で頑張っていらっしゃる方々は尊重されるべきだ。しかしその環境がどう考えても「感染拡大を防ぐ」という視点でみておかしければ、煙たがられても意見するのがまっとうな行為であり、それに耳を傾けるのがまっとうな行為であろう。「まわりの空気を乱さぬように意見しない」「あるいは、聞いてもらえるような姿勢で言え」は、喫緊の事態において意味がないどころか害悪ですらある。

岩田氏が批判しているのはまさしく、その「頑張った」ことだけで終わりにしてCDCの設立すらもまともに検討しなかった考え方なのではあるまいか。

「空気を読んで異論を言わない人を尊重し、異論を言う人間を排除する」風潮こそが、どこかのトップの言うままに、公文書改ざんなど好き放題にさせ、国家を崩壊せしめているのは言うまでもないだろう。

◆なんと厚労副大臣が「告発」!?

ともあれ、高山氏は現場で頑張られているので、これ以上の言及は当サイトとしても特にないが、彼の岩田氏への反論を、「政権サイドの予防策は無謬」とばかりに、一切の反省をしない与党政治家の姿勢には疑問を抱かずにはいられない。

そんな中、与党政治家でも気概がある方が一人おられた。

岩田氏の主張が、あたかも「2時間程度しか見ていないデタラメ」とでも言いたげに拡散する政権擁護派であるが、なんと真っ向から「ゾーニングが不適切に行われているデタラメな状況」であることを、船内から画像つきでツイートした政治家がいたのだ。

それは、厚生労働副大臣の橋本岳氏だ。橋本岳氏は、19日のツイートで”ちなみに、現地はこんな感じ。画像では字が読みにくいですが、左手が清潔ルート、右側が不潔ルートです”と画像つきでツイート。これがまったくゾーニングとしてなっていない画像だったのだ。

これには岩田氏もすかさず反応。

”この手前(写真撮ってるとこ)が清潔不潔が完全にクロスするゾーンになる、ということがおわかりいただけますでしょうか。”(岩田氏のツイートより)

”橋本さんに助けてもらうとは夢にも思わなかった。厚労省の裏工作と根回しの構図は全く理解できない。”(岩田氏のツイートより)

その後、何らかの圧力があったのか、厚労副大臣自らの「告発」の反響の大きさに当惑したのか、それとも何らかの不都合があったのか、なぜか橋本氏はその後、この画像つきのツイートを削除してしまった。とはいえ、当初”なお昨日、私の預かり知らぬところで、ある医師が検疫中の船内に立ち入られるという事案がありました。事後に拝見したご本人の動画によると、ご本人の希望によりあちこち頼ったあげくに厚生労働省の者が適当な理由をつけて許したとの由ですが、現場責任者としての私は承知しておりませんでした。”などと、「俺のメンツを傷つけて」的なツイートをしていた橋本氏からのよもやの「援護射撃」に、驚嘆の声が上がり、無事、画面キャプチャ付きで大いに拡散したのである。

なお、本稿執筆時点で厚生労働省から「ダイヤモンド・プリンセス」船内で事務業務を行っていた厚生労働省の職員1人と内閣官房職員1人の感染が確認されたと発表があった(参照:NHK)。患者との接触が考えづらい事務業務での感染。つまりは、岩田氏の言う通り、レッド・ゾーンとグリーン・ゾーンのゾーニングが適切ではなかったことの証左ではあるまいか。

ともあれ、「ダイヤモンド・プリンセス」内で感染してしまった方や感染した職員の快復を、そして下船された方々のご無事を祈りたい。

<文/HBO取材班>